シックスシグマ手法の社内浸透役を担うタイコ ヘルスケア ジャパンの井口幸人OpEx(オペレーショナル・エクセレンス)推進室室長
シックスシグマ手法の社内浸透役を担うタイコ ヘルスケア ジャパンの井口幸人OpEx(オペレーショナル・エクセレンス)推進室室長

 外科用手術関連製品などの医療機器を製造する米コヴィディエンの日本法人タイコ ヘルスケア ジャパン(東京都世田谷区)で、2005年から導入を進めてきた業務改善手法「シックスシグマ」が順調に成果を生んでいる。2007年9月期の1年間では3億6000万円もの財務的成果を生んだ。2006年9月期のシックスシグマ活動に比べ、成果の額は4割強伸びた。同社の年商は476億円(2006年9月期)であり、経営への貢献度も大きい。

 コヴィディエンは2007年7月に米タイコインターナショナルから独立して欧米で上場した、年商100億ドル超の医療業界の著名企業である。親会社が米国でシックスシグマを導入したのは2002年で、製造、調達、営業などで全社的に取り組んでいる。

 シックスシグマは、「DMAIC(定義-測定-分析-改善-制御)」の5ステップに則って、既存業務の品質や生産性などを改善する手法である。製造部門に適用するシックスシグマ手法はモトローラが1980年代に確立し、営業やスタッフ部門にも適用するやり方は米ゼネラル・エレクトリック(GE)が1990年代後半に確立したといわれる。

 日本法人のタイコ ヘルスケア ジャパンがグループ企業の日本シャーウッドとともに、シックスシグマの導入に着手したのは2005年4月。GE出身の織畠潤一氏が同年1月に社長に就任したのをきっかけに導入準備が本格化した。同年9月までに主要4事業部門のキーパーソンをトレーニングし、手法のノウハウを身につけさせた。また、社内の浸透役として織畠社長は同じくGE出身である井口幸人氏をヘッドハントし、OpEx(オペレーショナル・エクセレンス)推進室長に任命した。こうして2006年9月期では、25の業務改善プロジェクトを起こし、2億5000万円の財務的な成果を出した。

 引き続いて2007年9月期は製品品質、顧客サービスやコスト、生産性のうちいずれかを改善することを主目的としたプロジェクトチームを前年度の倍以上の60チーム作った。

 2007年9月期の活動で得られた大きな成果の一つが透析針の切れ味向上だ。「現行品よりもスムースに挿入できるので患者さんの痛みを低減でき、営業努力もあって、採用に踏み切る医療機関が増えた」と井口室長は言う。この改善例では、2カ月で数千万円の売上増を達成。2008年9月期は数億円の売上増を見込む。

 このほか、過剰在庫と欠品の抑制、納期順守、輸入品検査精度の向上、商談の効率化、販売予測精度の向上、製造コストの削減、現金回収の効率化など改善対象業務は多岐にわたった。

 井口室長によれば、単なる財務的な成果ばかりでなく、異なった仕事の進め方や手順を持っていた社員同士が互いに共通の仕事の進め方や共通の仕事の言語を持てるようになった意味も大きいという。今後もプロジェクト・リーダーを担う人材への研修を強化して、スキルや手順のばらつきを解消していきたいと井口室長は考えている。