写真1●サーバー仮想化に携わったITソリューション部の増井潤一部長(中)と白木尚IT・インフラグループリーダー(左),布施川貴久課長代理(右)
写真1●サーバー仮想化に携わったITソリューション部の増井潤一部長(中)と白木尚IT・インフラグループリーダー(左),布施川貴久課長代理(右)

 サッポロビールは,VMware ESX Serverを使った仮想サーバー環境に新旧合わせて約50システムを統合し,運用している(写真1)。「最近は,毎週のように仮想サーバーを追加している。リソースをすぐに用意できて,統合運用管理できる点がサーバー仮想化の大きなメリット」とITソリューション部課長代理の布施川貴久氏は話す。システムのTCO(総所有コスト)も,以前と比べ30~40%削減できた。

 同社がサーバーの仮想化と統合に取り組んだきっかけは,Windowsサーバーだけで120台以上になるシステム運用管理の負担を軽減したかったからだ。「焼酎事業や酒類製造工場を相次いで買収するなど,経営のスピードが高まっている。これに伴って情報システムの開発にも“速さ”がより強く求められるようになったが,サーバーの運用管理の負担が重かった。統合できるものは統合して,運用の負担を軽くしたかった」(ITソリューション部長の増井潤一氏)。

NT 4.0上の古いシステムを仮想化

 仮想サーバーのプラットフォームは,日立製作所のブレード・サーバーBladeSymphony BS1000にVMware ESX Server 2.5.1を組み合わせた。用意したブレードは13台。1ブレード当たり,2個のXeonプロセッサ(動作周波数3.8GHz)と4G~8Gバイトのメインメモリーを搭載している。ここに,Windows,Linux上で稼働していた部門システムやグループウエアなどを移行させた。図1は,ブレード・サーバー上に構築した仮想サーバー構成の一部を例示している。ブレードごとに2~4台の仮想サーバーを稼働させている。

図1●ブレード上の仮想サーバー構成の例と移行方法
図1●ブレード上の仮想サーバー構成の例と移行方法
仮想サーバー構成の例を示す。4種類のOSが稼働し,システムの移行方法にもさまざまなパターンがある。
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 移行したシステムの6割以上はWindows NT Server 4.0上で稼働していた。NT 4.0対応のハードウエアを新規調達できなくなっており,今後の運用について対策を迫られていたが,仮想化技術でこの問題を解決できた。仮想化ソフトのVMware ESX Serverを利用すれば,NT 4.0に対応した仮想マシンを利用できるからである。「もし,仮想化以外の方法で再構築しようとしたら,少なくとも1システム当たり数百万円の費用がかかる。全体では億単位の金額になったはず。仮想化を採用したことで,再構築コストを抑制できた」とITソリューション部 IT・インフラグループリーダーの白木尚氏は説明する。

 移行作業そのものは,技術的に容易だったという。OSをバージョンアップせずに,システムをそのまま仮想サーバーに移行させる場合は,P2V(Physical to Virtual)移行ツールのVMware P2V Assistantを利用した。このツールは,移行元のインストール・イメージを仮想サーバー上に再現できる。仮想サーバー上にOSやアプリケーションを再インストールしたり,パラメータ設定やデータ移行をしたりする手間がかからない。