カルビーがスーパーなどの小売店に対して、店舗が必要なPOP(店頭販促)だけを必要なタイミングで受注生産し、最短4日で店舗まで届けるサービス「CalNeCo(カルネコ)」の外販を拡大している。

POPを受注生産しているカルネコセンター   POPを受注生産しているカルネコセンター
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 カルネコはもともと、無駄なPOPの廃棄に悩み続けてきたカルビーが自社のために開発したシステムだが、同様の悩みを抱える一般消費財メーカーにも需要があると見込んだカルビーは、カルネコの外販に踏み切った。

 2007年3月にカルネコ事業をカルビー社内の1つのカンパニーに位置づけ、これまでに10社にカルネコの仕組みを使ったサービスの提供を開始している。事前に小売店に配布してあるPOPの見本帳の中から、店舗は自由にPOPを選択する。その注文をカルビーがカルネコを採用した企業に代わって受け、POPをその都度生産し、配送パートナーであるヤマト運輸の物流網を使って必要な店舗まで配達する。

 2008年2月までには、さらに2社がカルネコのサービスの利用を開始することになっている。採用企業はいずれも日本を代表する大手の食品メーカーや日用品メーカーばかりで、これらの企業はどこもかつてのカルビーと同じように、あらかじめ見込み生産したPOPを小売店に大量にばらまきながらも、店頭には設置されずにPOPの廃棄の山を生む無駄に悩まされていた。

 カルビー自身はカルネコによるPOPの受注生産によってPOPの廃棄がなくなり、年間数億円かかっていた販促資材コストを半減させている。カルビーよりも売上高が大きい食品メーカーなどは、毎年さらに多くの販促資材コストをかけてPOPを大量生産しており、カルネコによるコスト削減効果は一層大きくなると考えられる。

狙いはコスト削減よりも訴求力のある売り場作り

 カルネコはメーカー側の販促資材コストの削減だけが狙いのように思えるが、真の目的は別のところにあるという。加藤孝一・カルネコカンパニーCOO(最高執行責任者)は、「極端な安売りをしなくても、顧客が商品に手を伸ばしてくれる売り場作りを目指した結果、ジャスト・イン・タイムでPOPを生産して店舗に配送するカルネコの仕組みに行き着いた」と語る。

 小売店にしてみれば、必要なPOPだけが必要なタイミングで届けば、最小限の労力で訴求力のある売り場を作りやすくなる。カルビーが実施した実験では、顧客の購買動機に訴えかける売り場をPOPによって店頭に用意できれば、大幅な値引きをしなくても商品が売れていくという。

小売店には「プロモーションパック」の名称で、必要なPOPだけを配達している   小売店には「プロモーションパック」の名称で、必要なPOPだけを配達している
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 2001年9月に菓子業界の先陣を切って、リベート(販売奨励金)の廃止に踏み切ったカルビーは、小売店に対してリベートに代わる「売れる仕組み」の提供が不可欠になっていた。それがこのカルネコなのだ。

 カルビーはポテトチップスに代表されるスナック菓子の製造・販売とは全く異なるシステムの外販サービス事業を軌道に乗せ始めている。カルビーの目標は、カルネコを一般消費財メーカー全体のPOP生産・配送インフラに育てることで、そのインフラを使ってメーカーの枠を超えた共同販促の企画などを実現させていきたいという。