コクヨの山崎篤RDIセンター@Tovas事業部部長
コクヨの山崎篤RDIセンター@Tovas事業部部長

 コクヨは2004年7月から企業間の文書の電子データのやり取りを助けて、そのトレーサビリティーを残すASPサービス「@Tovas(アットトバス)」を販売してきた。現在190社以上、およそ3000IDまで顧客は拡大しているものの当初は販売に苦労した。

 その理由を@Tovas事業部の山崎篤事業部長は、「数十万~数百万円単位の商材を扱う法人営業の担当者には、毎月数万円というサービスは一生懸命売る気になりにくい。しかも、商品の知識は、オフィス家具などほかの商材とはまったく異なるので勉強をしなければならない」と説明する。

 さらに大企業の顧客では、コクヨが強みを持つオフィス家具や文具を買ってくれる購買部門と、@Tovasを売り込みたい情報システム部門は異なる。@Tovas事業部は、新規事業を手がけるRDIセンターの傘下にあることから専属の営業担当者もいない。5人のメンバーが兼務で販促に取り組んできたが、グループ内や取り引きのある企業で精一杯。

 そんななか2005年に山崎氏が展示会で出会ったのが、BtoB向けのコールセンター大手のエムエム総研(東京・新宿区)。山崎氏は同社の手を借りて再び営業に乗り出した。エムエム総研の強みは、一般的なBtoCのコールセンターが行う人海戦術的な大量コールではないという。「コールをかけながらも仮設・検証を繰り返してより効率的なマーケティングを展開する」(矢代治彦取締役法人営業コールセンター事業部事業部長)ことにある。「社員がみんなで電話をしていると営業のうまい人が契約を取ってくる。するとみんなはそこに市場があるのかと思うが、あくまで個人の能力にすぎない。均一したオペレーターをそろえているコールセンターに依頼すると定量的にターゲット層が分かってくる」と山崎氏は語る。

 エムエム総研に市場分析を助けてもらい、コクヨが突き止めたのは@Tovasの潜在市場だった。「初めは大容量のデータ送信サービスとして売り出していたが、『セキュリティー』というキーワードに商品の強みがあると分かってきた」(山崎部長)。

 その後、大きく舵取りをして営業面でも「内部統制対策」「情報トレーサビリティー」を打ち出したところ売り上げは伸び始めた。売り上げ拡大に成功した@Tovas事業部は、2008年にRDIセンターから独立することが決定している。