パイオニアが女性管理職を増やすために、働きやすい環境づくりを目指している。2009年度までに管理職(課長職以上)を現在の21人から31人に増やしたい考え。同社の女性活用推進への取り組みは、2004年6月に「G(ジェンダー)プロジェクト」として始まったが、今年5月には人事部内に「女性活躍支援センター」という常設組織を設置した。今年度中に介護などで休職しなくてもよいように在宅勤務を試験的に導入するなど、働きやすい環境づくりを整備している。

 女性活躍支援センターの松宮由季所長は、「女性が働きやすい環境づくりは、おのずと男性も働きやすくなる。多様性を生かせる風土を目指したい」と話す。こうした取り組みにより、新卒採用者のうち女性に占める割合を現在(2008年4月入社)の約10%から2010年度(2011年4月入社)には約20%にまで引き上げたい考えだ。

 女性管理職を推進する取り組みはこれまでの3年間、女性社員の意識改革が中心だった。「技術職は男女の差はあまりないが、営業職だと女性はアシスタントの役割と昔は考えられていた。まず女性が将来像を描けるように意識改革から始めた」と松宮所長は話す。

 女性社員や退職した社員にアンケートを実施しても、「キャリアプランを描きにくい」という答えがあった。「上を目指せと言われてもどうすればいいのか、具体的なイメージが湧かない」(女性活躍支援センターの上杉浩代主事)ということだった。そこで、イントラネットや社内報で、活躍する女性社員を紹介し始めた。

女性社員同士の交流の場を拡大

 並行して、各部署でバラバラにいる女性社員同士が交流できる場を用意した。当初は基幹職(係長・主任クラス)と呼ばれる次世代を担う若手社員を対象に開催していたが、3回目となる今年は全女性社員に対象を拡大。このフォーラムには、社長や役員など男性も含めて830人が集まった。このほか事業所ごとにミニフォーラムを開催し、業務でのかかわりがない女性社員同士が交流できるようにしてきた。

多くの女性社員が参加した今年開催のフォーラム   多くの女性社員が参加した今年開催のフォーラム

 女性管理職を増やすためのプロジェクトが部門に昇格したことで、重点を風土づくりから制度など働きやすい環境づくりに変えた。実現した施策の1つがメンター(助言者)制度の導入である。まず9月から女性管理職に対して、役員がメンターとなる制度を開始した。定期的に話し合いの場を持ち、メンターが話を聞く。現在女性管理職は、女性の若手社員から目指される立場であるが、目指すべき女性の先輩が少ない。「自分の悩みを聞いてもらい、上層部に知ってもらうことで安心感を与えることが狙い」(松宮所長)。メンターとなる役員にとっても収穫がある。女性管理職の悩みや考えていることが、実体験を通して理解ができるからである。

 さらに、来年度に入社する新入社員には基幹職の女性メンターを配置する。これは松宮所長の自らの体験からのアイデアでもあった。「男女雇用機会均等法が施行されてすぐに技術者として入社した。100人以上のなかに1人しか女性がいない環境で、職場も扱いに戸惑っていた」と振り返る。女性同士の縦のつながりを作ることで、悩みを聞きやすい環境を作ることを目指す。好評であれば男性にも広げることを検討する。