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事例データベース

カルビー
購買動機に訴える売り場改革、POPの受注生産で安売り脱却へ

川又 英紀=日経情報ストラテジー 2007/11/22 日経情報ストラテジー
出典:日経情報ストラテジー 2007年10月号146ページより
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
目次一覧
プロモーション革新のリーダーであるCalNeCoカンパニーの加藤孝一COO
プロモーション革新のリーダーであるCalNeCoカンパニーの加藤孝一COO

カルビーがリベート(販売奨励金)廃止と同時に売り場作りの改革を断行した。小売店が必要とするPOP(店頭販促)をカルビーが受注生産して4日後に届ける。店舗を回る「ゾーンセールス」が取り付けを支援し、顧客にメッセージを伝達。「プライマリー・ベネフィット(決定的購買動機)」を訴求し、乱売を回避する。安売りの頻度を抑えて、小売店も卸もカルビーも利益を確保できる関係を築く。

 「顧客の購買動機に訴えかけるプロモーションを店頭できっちりと実現できれば、価格に関係なくスナック菓子を買ってもらえる」

 2001年からカルビーでプロモーション革新を推進する加藤孝一・CalNeCo(カルネコ)カンパニーCOO(最高執行責任者)の信念は、この仮説に集約される。ここ数年は仮説を売り場で検証し、小売店に商品の新しい売り方に対する理解を求める移行期間だった。カルビーの目標は「安売りからの脱却」であり、言い換えれば、値引きによる価格訴求から、顧客の「買いたい理由」を売り場で喚起する付加価値訴求への転換といえる。


●安売りからの脱却を図り、顧客の購買動機を喚起する付加価値訴求に転換   ●小売店の45%がカルビーに賛同
●安売りからの脱却を図り、顧客の購買動機を喚起する付加価値訴求に転換
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  ●小売店の45%がカルビーに賛同
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 これまでは、スーパーの店頭にポテトチップスなどのスナック菓子が山のように積まれ、激安価格の値札が付けられてたたき売られる場面が散見された。名前が通ったカルビーの商品は、特売のターゲットになりやすい。過度の安売りが横行しては小売店も卸もカルビーも利益を望めるわけがない。皆、安売りに疲弊していた。しかも安売りされて価値が下がったブランドは、結局売り場から消える。この現状をカルビーは見過ごせなかった。

 出した結論は、安売りしなくても顧客が商品に手を伸ばしてくれる売り場作りだった。それが加藤COOが指揮するプロモーション革新である。

 同時期、カルビーは小売店へのリベートを廃止し、オープンプライスに移行する「新取引制度」の準備を進めていた。当然、メーカーの都合だけでリベートをやめれば、反発を食らう。そこで、「値引きしなくても顧客の支持を得られる売り場作りをセットで考えた」(明田征洋会長)。その実現手段が「CalNeCo」だ。そして2001年9月にリベート廃止に踏み切った。カルビーはリベート廃止や特売頻度の減少、無駄な販促の排除で、小売店が売価を10~20円引き上げても、顧客に支持され、利益を確保できる体制を整え始めた。

4日で必要なPOPだけを届ける

 加藤COOが2002年から2004年にかけて作り上げたCalNeCoの実体は、POPの受注生産・配送システムである。POPの作成はデザイン会社の帆風(東京・新宿)が、配送はヤマト運輸が担当する。カルビーの商品を並べた菓子売り場を作るために必要となる様々な形状のPOPを、小売店が必要とするタイミングで作成し、すべてカルビーの負担で発注から最短4日で店舗に届ける。

●POPを受注生産して4日後に店舗に届ける「CalNeCo」システムの全体像
●POPを受注生産して4日後に店舗に届ける「CalNeCo」システムの全体像
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 CalNeCoはメーカーが大量のPOPを見込み生産して小売店にばらまく旧来型の販促を根底から覆す日本初の仕組みだ。メーカーからのお仕着せのプロモーションをやめ、小売店が欲しがるPOPだけを実需に合わせてローコストで生産・配送する。業界ではCalNeCoを「POPのアスクル」と呼ぶ人もいる。カルビーは2005年9月にCalNeCoを事業部(現在はカンパニー)として独立させ、食品・消費財メーカーなど約10社に外販を始めている。

 これまではカルビーもほかのメーカーと同様に、小売店にPOPを配っては売り場に取り付けてもらえずに捨てられるという無駄を繰り返してきた。しかし、今では受注生産で廃棄がなくなり、年間数億円かかった販促資材コストは半減した。その分はカルビーの利益に上乗せされる。小売店にとっても、必要なPOPだけがジャスト・イン・タイムで届くので売り場を作りやすい。例えば、関東圏を地盤にするスーパーのエコス(東京都昭島市、写真の売り場)は、CalNeCoによって季節感があって楽しい売り場を作りやすくなったという。

 もっとも、カルビーにしてみれば、販促費を減らすことが目的ではない。あくまでも目標は「小売店も卸も当社も利幅を上げられる体制を築くことだ」(加藤COO)。小売店が売価を10~20円引き上げても、価格以外の購買動機を売り場で巧みに訴えることで買ってもらえれば、粗利益は増える。プロモーションを成功させると、定番棚に同じ商品を並べた時にも売れ行きが上がることが分かってきた。加藤COOはCalNeCoによる付加価値訴求が夢物語でないことを社内外に知らしめた。

●付加価値訴求への転換までには、10年以上のプロモーション革新の歴史とリーダーの仮説検証があった
●付加価値訴求への転換までには、10年以上のプロモーション革新の歴史とリーダーの仮説検証があった
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 ある時、加藤COOはディスカウント店に通常より20円高く値付けした商品を並べ、その売り場を「カルビーの菓子は『野菜』から作られている」ことをアピールしたPOPで演出。すると顧客が次々と商品を買っていった。その姿を見て、男泣きしたという。顧客に話しかけると、彼らは一様に「野菜のお菓子なら体に悪くなさそう。価格がいくらだったかは覚えていない」と答えた。売り場で顧客にメッセージが伝わり、安売りとは別のところにある購買動機を刺激できた証拠を得た。

 CalNeCoを下支えする立役者は、全国に約250人にいるカルビーの「ゾーンセールス」である。主に地元の主婦で構成され、1人当たり平均40~50店、合計約1万1000店の主要なスーパーの菓子売り場を巡回する。プロモーション革新を現場で具現化しているのは、店舗ごとに異なる立地や客層を知り尽くした彼女たちだ。2006年にはゾーンセールスが通う小売店のうち、45%が付加価値訴求に賛同して売り場を替え始めた。

 もともとゾーンセールスは店頭での鮮度管理を徹底するために配備された専門部隊である。小売店の担当者と次にどんな売り場を作ろうかと商談したり、鮮度をチェックしたりして古い日付の商品はおいしく食べられるうちに売り切ってしまうように促す。そうした本来の役割に、CalNeCoを展開していくためのPOPの発注代行や、届いたPOPの取り付け支援といった仕事が加わった。

 ゾーンセールスは、カルビーがあらかじめ用意した小売店向けのPOPカタログ「プロモーションパック」を使って小売店と打ち合わせする。そして多くの場合は、ゾーンセールスが小売店に代わってカルビーのコールセンターに小売店が求めるPOPを発注する。最近は小売店が独自に企画・立案したオリジナルPOPの作成まで引き受けており、その割合は日増しに高まっている。小売店がプロモーション革新に本気になってきた証拠だ。

決定的購買動機の教えがすべての始まり

 カルビーのプロモーション革新は1990年代に始まった同社のものづくり改革に源流がある。スナック菓子の販売が伸び悩むなかで、カルビーは商品開発や販促を根本から見直す決断を下す。この時、米国から識者を招き、「プライマリー・ベネフィット」を学んだことが、その後のプロモーション革新を決定づけた。プライマリー・ベネフィットとは「顧客には商品を買う決定的な理由が1つある」という考え方で、購買動機を発見して商品を開発・販促することがすべての出発点になる。当時マーケティングのマネジャーだった加藤COOは先生の一番弟子になり、2002年5月に「購買動機対応戦略」という門外不出の冊子に内容をまとめて全社員に配った。これがカルビーの基礎になっている。

 加藤COOが立てた冒頭の仮説はプライマリー・ベネフィットから導かれた。カルビーは1998年から2003年にかけて毎年、購買動機調査を実施。するとカルビーの商品の場合、「価格は9番目の購買動機にすぎないことが判明した」。それよりも「じゃがいも(味や素材)が好き」「飲み会が盛り上がる」「話が弾む」といった理由が上位に来た。つまり、売り場ではそうしたメッセージを求めている顧客のほうが多いはずだ。もちろん、価格の安さを理由に買う人もいるが、それは9番目の購買動機なのだから、毎回安売りだけで訴求するのは、かえって逆効果になるという結論が出た。

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