スーパーの大丸ピーコック(東京都江東区)は10月20日、全68店にタッチペン式の新しい商品発注端末「EOB(電子オーダーブック)」を398台導入した。経験の浅い発注担当者でもすぐに発注業務がこなせるようにして、生鮮品などの廃棄率を引き下げていく。EOBで発注する品目は生鮮品や日配品、総菜など保存がきかない商品。EOBの利用によって、廃棄率を前期比で0.3ポイント引き下げるのが当面の目標だ。

 これまで使ってきた発注端末は発注数を打ち込む入力機能しかなく、情報の表示機能がなかった。このために的確な発注にはある程度の経験が必要だった。発注時に必要な各種情報はバックルームでパソコンや紙の資料を確認したり、記憶しておかなければならなかった。

 今回のEOB導入により、店頭にいながらにして、各種情報を迅速に確認できるようになった。過去7週間分の単品の販売実績や値下げした数、廃棄数、さらには個店に特有の近隣のイベント情報や特売情報、ポイントアップ情報、天候・気温などだ。担当者からは「発注業務が非常に楽になった」と好評だ。

 EOBでは単品ごとにコメントを表示することもできる。例えば「明日はこの食材が健康に良いという効能がテレビ番組で紹介される」といった情報だ。EOBの導入プロジェクトを推進してきた財務・経営計画部の宮田憲治専門部長情報システム担当は、「こうした情報がある商品は多めの発注をするなど機敏に強気な発注をしてほしい」と語る。

 こうしたコメントの更新は本部と店長が担当する。「どんどん書き込むように指導を始めている。特に個店ごとのイベント情報の更新は、店長の手腕にかかっている。それが発注精度の向上に直結することを理解してもらう」(宮田専門部長)。

図のタイトル   タッチペン式の新しい発注端末(EOB)を操作する大丸ピーコックの店員
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加工商品用の自動発注システムも精度向上のため更新

 大丸ピーコックのIT(情報技術)活用推進はこれにとどまらない。

 この9月、加工食品に代表される陳列期間がやや長い定番商品の自動発注システムを刷新した。同社はもともと2005年8月からスーパー業界で先駆けてコンピューターによる加工食品の自動発注を導入していた。

 今回のシステム刷新は自動発注数の精度を上げるのが狙いだ。これまでの自動発注システムはあらかじめ決められた「基準在庫数」に対して、売れた分だけを自動的に補充発注していくものだった。今回の新システムでは日々の売れ行きに応じて基準在庫数も動的に変更させていける。これによって在庫削減を強化する。この自動発注システムは、NECのパッケージ・ソフトをカスタマイズして構築している。

 2005年当時の加工食品用システム導入のきっかけも、経験が浅い発注担当者が増え続けていることだった。自動発注の導入もやむなしと宮田専門部長らは考えた。ただし宮田専門部長はこの当時、「自動発注に大きな抵抗感を感じた」と振り返る。人間の頭で仮説と検証を繰り返しながら商品発注するやり方になれ切っていたためだ。

 だが、「今は自動発注に自信を深めた」と宮田専門部長はいう。1年で最も忙しい12月の繁忙期を既に2回、自動発注で乗り切ったからだ。加工食品の発注業務から開放されたぶん、店員は生鮮品などの発注に集中できるようになった。 

 このほか、この7月に店舗の伝票処理を電子化するための新しい携帯情報端末を、全店で合計約270台導入した。

 引き続いて2008年には、過去の特売実績(設定した割引価格と売れた数)を参照にしながら、次回の特売発注ができるシステムの稼働を計画している。

松坂屋系スーパーへの横展開は未定

 なお、大丸ピーコック親会社の大丸と松坂屋ホールディングスは9月に経営統合してJフロント リテイリングが発足した。Jフロントは傘下のスーパーを1社に集約する方針を既に打ち出しているが、大丸ピーコックのITの仕組みを、松坂屋ストア(名古屋市)にも導入するかは、今のところ未定である。両社のシステム担当者は、10月から話し合いを始めたばかりだ。