写真1●画面に表示したQRコードを顧客の携帯電話で読み取り決済サイトへ誘導
写真1●画面に表示したQRコードを顧客の携帯電話で読み取り決済サイトへ誘導
 2007年10月に開業から11年を迎えた東京海上日動あんしん生命保険(あんしん生命)は,保険業界では新参に類する企業である。独自性の高い商品開発を積極的に進め,取扱商品はおよそ100種にも及ぶ。2007年3月には個人保険および個人年金保険の加入件数が225万契約に達し,市場でのシェアを拡大しながら成長を遂げている。

 同社は2007年10月19日から業界で初めて,携帯電話を介してクレジットカードの信用照会を即時に実現する「ケータイ・クレカ決済」を開始した。営業担当者,あるいは代理店に所属する保険商品取扱者の携帯電話画面に,決済情報を格納したQRコードを表示。これを顧客の携帯電話で読み取り,決済専用サイトにアクセスすることでクレジットカード決済の手続きを行うものである(写真1)。

 サービス開始時点で,JCB,DC,UFJ,NICOS,VISA,Masterの6種類のクレジットカードに対応する。保険業界全般において,新規加入契約時の保険料は現金支払いを条件とするケースが大半であることから,クレジットカードによる即時決済対応は注目に値する事例である。

高まるクレジットカード払いのニーズに応える

 通常の保険契約では,契約書などの提出のほか,保険料の領収をもって初めて契約の効力が発生する。このため,基本的には商談成立時に加入保険料を営業担当者が現金で徴収し,即時に効力を発生させるようにしていた経緯がある。契約の意思表示から支払い完了までにタイムラグが生じる決済手段だと,その間に万が一の事故が起こった際に保険金が支払えなくなるおそれがあるからである。

 一方,月々の生命保険料の支払いは口座振替が主流となっている。生命保険文化センター「平成18年度『生命保険に関する全国実態調査』」によると,1世帯あたりの年間払い込み保険料は平均52万6000円にも上っており,決して少ない額とは言えない。公共料金などのクレジットカード払いが一般化する中で,保険料においてもクレジットカード払いを希望する顧客の声が高まっていた。

写真2●あんしん生命の菊地和貴課長代理
写真2●あんしん生命の菊地和貴課長代理
 そこで同社は顧客のニーズに応えるべく,まず2006年7月に,初回の保険料のみクレジットカード払いを可能にした。その5カ月後の2006年12月には,個人向けの主力商品に限定して全期間に渡るクレジットカード払いの扱いを開始。さらに2007年8月20日には限定を解除し,全種目に対象商品を拡大した。

 クレジットカード払いの対応にあたり,サービス開始当初に新規契約時の決済手段として用いたのがハガキによる郵送手続きだった。クレジットカード払いを希望する顧客にハガキを渡し,カード情報などを記入した上で郵送してもらうことでクレジット決済に対処したわけだ。

 しかし,ハガキの場合は発送から処理までに数日間を要する。クレジット決済への要望には応えられたものの,契約成立までのタイムラグを解消する即時決済のニーズには応じられていなかった。

セキュリティを確保できるソリューションを検証

 そこでクレジットカードでの即時の決済手段に関して,同社は様々なソリューションを検討した。その一つが専用端末。同社の販売形態は,営業担当者および代理店に属する取扱者による訪問販売が主流である。カタログや契約書類,プレゼン用のノートPCなどと合わせて専用端末を持参し,契約に至った場合はその専用端末を使って顧客の目の前でカード決済する方式である。

 しかし,「専用端末を常に持ち歩くのは重くてかさばり,何万人もの取扱者一人ひとりに持たせるには端末のコストがかかり過ぎる。我々の営業スタイルには適せず,採用しなかった」(東京海上日動あんしん生命保険 企画部 営業企画グループ 課長代理の菊地和貴氏)。

 ほかにも,例えば営業先からコールセンターへ電話をかけ,カード情報を伝えて与信手続きする案もあった。しかし,営業担当者の目前でカード情報を話すのはセキュリティ確保の観点から具合が悪い。また「携帯電話を使ったソリューションも複数のシステムを検証したが,その多くが営業担当者の持つ携帯電話に顧客のカード情報を入力してもらうもの。他人の端末にカード情報を入力するソリューションは,コールセンターと同様に安全性の確保に懸念が残った」(菊地氏)という。

 このような比較検証の末,即時決済ができて携帯性や端末コスト,セキュリティの確保といった全ての要件を満たすソリューションとして同社が採用を決めたのが,日本公共料金サービスの訪問販売集金システム「決済・るるる」を保険会社向けにカスタマイズして実現した「ケータイ・クレカ決済」である。あんしん生命と日本公共料金サービス,および日本公共料金サービスの親会社で決済・るるるの販売窓口であるトランスコスモスの3社で共同開発した。

■変更履歴
初出で,クレジット決済手段として「携帯端末を導入した」という記述がありましたが,事実と異なっていました。ケータイ・クレカ決済までの導入経緯と合わせて修正しました。お詫びして訂正します。 [2007/11/01 17:20]