花王は10月下旬、消費者が「快適感」を強く感じる商品作りを目的として、日常生活の様々なシーンで感じる快適感を数値で測定する方法を編み出したことを明らかにした。同社は今後、日常生活の様々なシーンの快適感を測定する手法を、香りをはじめとした商品の開発に応用し、機能性に加えて情緒性が高い商品作りを従来以上に推進していく。今回の快適感測定手法を使えば、既存商品やパイロット商品の評価を定量的に実施でき、商品改良に役立つというわけだ。

 花王の尾崎元規社長は2004年6月の社長就任当初から、国内市場での高付加価値戦略の重要性を訴え続けてきた。尾崎社長の考える付加価値は、機能的価値と情緒的価値の2つの要素から成る。今回の新手法によって、情緒的価値の高い、つまり、快適感の高い商品作りを実践しやすくなる。

 「付加価値の高い商品にはまず、きっちりとした技術に裏付けされた機能的な価値が必要。つまり、効果を実感できるという価値だ。もう1つ必要なのは、その商品ブランドから感じる情緒的価値で、例えばこれを使えばきれいになるとわくわくする、といったもの。機能的価値に加えて情緒的価値もないと、成熟した国内市場では高付加価値商品として認められない。社長に就任して以来、両方が必要だと折に触れて言ってきた」(尾崎社長)

 尾崎社長は、これまでに大ヒットした高付加価値商品の一例として、2003年に発売したヘアケア製品「アジエンス」を挙げる。東洋人に多い黒髪をより美しく見せるという機能的価値と情緒的価値を追求し、それまで安い価格帯だったポンプ式のシャンプーで、約700円の販売価格を実現した。

 また、尾崎社長が社長就任前にマーケティングに深く関与した2004年4月発売の台所用洗剤「キュキュット」も高付加価値商品の1つ。単に機能性の高い台所用洗剤を販売し続けてもいずれは価格競争に陥ると考えて、容器のデザインや形状をおしゃれにし、食器を洗った後に「きゅきゅっ」と音が鳴るくらいきれいになるという宣伝をすることなどによって、機能性だけでなく情緒性を訴えた。

「快適感」は16種類の感情から成り、6タイプある

 花王の言う快適感は、「熱中・興味」「対人的な好感情」「強さ」「やる気・前向き」「豪華さ」「ときめき」「自信」「感動」「安静・リラックス」「満足・幸福」「爽快・リフレッシュ」「親和・愛情」「活気・陽気」「気楽・気軽」「開放感」「達成感」の16種類の感情で構成される。この16項目は、日常生活で感じる快い場面での印象の強さを表す言葉を3158人に回答してもらった結果から抽出した。

 例えば、「バーゲンで買い物をする時の快適感」と「テーマパークで遊ぶ時の快適感」を、前述の16種類の感情項目それぞれについて「まったく感じない(0ポイント)」から「はっきり感じる(3ポイント)」まで4段階で、多数の消費者に評価してもらったところ、感情項目の分布が似通っていたという。この2つの生活シーンでは、ときめき、満足・幸福、活気・陽気の3つの感情項目のスコアが高い。花王はこれを「娯楽型」の快適感と名付けた。

 また、肌の手入れをする際、洗顔だけだと爽快感が強く表れ、丁寧にスキンケアをすると達成感とやる気・前向きの2項目が高まることが判明した。つまり、肌の手入れという同じ生活シーンでも、具体的な手入れ方法によって快適感の質に変化が起こるわけだ。
  
 花王によると、日常生活における快適感は、16種類の感情項目の分布状況から判断すると6パターンに大別できる。前述の「娯楽型」を始め、「癒し型」「満足型」「愛情型」「達成型」「ときめき型」がある。

 花王では、情緒的価値の定量分析方法の開発を、同社の香料開発研究所が2000年ころにスタート。快適感を測定する手法そのものは2005年11月に開発を終え、2006年11月から順次、日本心理学会などの学会で発表してきた。現在までに、より多くの生活シーンでの快適感を測定してきている。