「データ連携ツールを使いこなし、2005年1月の稼働以来、毎月バージョンアップしてシステムの質の向上につなげている」――。ソフトバンクテレコム 顧客システム統括部法人システム部の菊地正行氏は、システムの改善スピードにこう胸を張る。同社は直収型電話サービス「おとくライン」の申し込み受付システムの構築を1カ月という“超短期間”で完遂し、その後も1カ月単位で改修を繰り返している。稼働時はNotesと基幹システムを接続するだけだった受付システムは、現在は70システムを接続するまでに機能を拡張した。

 菊地氏が1カ月という短期開発に着手したのは04年12月。孫正義社長の方針で、それまで個人向けに提供していたおとくラインを、法人向けにも提供することが決まったためだ。1企業で複数の回線を持つ法人向けにビジネスを展開するとなると、単回線の申し込みに限られた個人向けに比べて、受け付けの事務作業量は膨大に増える。このため、表計算ソフトで申し込みデータを作成して基幹システムに受け渡すことが、開発要件となった。

 菊地氏は急きょデータ連携ツールの選抜に入り、最終的にインフォテリアのASTERIAの採用を決めた。選択のポイントは3つあった。まず、システムのインタフェースを開発してテストする手間を省くため、同社が使っているグループウエアや表計算ソフト向けのアダプタがあること。具体的にはNotesやExcelだ。特にNotesとの接続容易性を評価したという。

 次に、要件が分かっている社内SEが開発できるようにするため、「簡単に機能変更・追加ができること」(菊地氏)を重視した。ASTERIAの研修を3日間受けた後、すぐに開発に着手できた理由を「直感的にシステム連携機能を開発できるGUIのおかげ」(菊地氏)と振り返る。3つめのポイントは、稼働後に監視や運用を容易に実施できることだった。「リソース管理やログ解析、スケジューリングが可能な点を評価した」(菊地氏)。

 1カ月の短期開発を乗り切った後も、受付システムには続々と追加の開発要望が寄せられた。おとくラインを開通させるに当たって発生する、NTT電話局での工事の申請や人員の手配、進捗管理といったものの自動化だ。菊地氏はこうした要望をリスト化し、改善までのリードタイムを短縮することを優先して、1カ月単位で対応を図った。基幹システムとの接続も、当初のCSVでのデータ交換から、自動的にデータ連携を進めるまで改修が進んだ。菊地氏は今後、「申し込み処理に関わる人件費を抑えるようにワークフローなどを強化していきたい」と話す。

 またソフトバンクテレコムは現在、携帯電話を提供するソフトバンクモバイル、ADSLを提供するソフトバンクBBと、顧客や課金を管理する基幹システムの統合に向けて話を進めている。ソフトバンクテレコムの天野浩 情報システム本部顧客システム統括部法人システム部長は、「各社のデータをどう繋ぐかは3社でまだ模索しているが、データ連携ツールを基盤として利用していくことになるだろう」と見通しを話す。