大手精密機器メーカーのニコンは、2007年上期のデジタル一眼レフカメラ市場で40%以上の販売台数シェアを獲得した。不動の首位だったキヤノンを抑え、初の年間1位が視野に入っている。ニコンの躍進を間接的に支えるのは、顧客情報や販売情報などを集約してスピーディーに分析する専門組織「マーケティングラボ」である。

 「CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)システムにかなり投資をしたが、データを集めるだけでは仕方ない。スピード感をもってきちんと分析できる体制を作った」と、ニコンの本田隆晴・映像カンパニー事業企画部ゼネラルマネジャーは説明する。

 BCN(東京・文京区)の調査によると、ニコンのデジタル一眼レフの市場シェアは2005年が29.3%で、2006年は33.6%。最大のライバル、キヤノンはそれぞれ52.1%、44.6%だった。2007年はニコンとキヤノンがシェア40%前後でデッドヒートを演じている。

 ニコン躍進の直接的な要因は、多様な顧客ニーズを考慮して配置した製品ラインナップにある。昨年終盤に発売した割安な中級機「D80」と割安な入門機「D40」などによって、同社のラインナップは現在、入門機2機種、中級機3機種、上級機1機種となり、それらがバランスよく売れているという。

 映像カンパニー内に設けたマーケティングラボの役割は、製品ごとに購入者を様々な観点や手法によって類型化していき、マーケティング戦略をスピーディーに修正できるよう支援すること。顧客調査はもちろん、販売店や販売会社から日次販売データも集める。インターネット上にある自社製品や他社製品に関する書き込み情報も、特に新製品が発売されたタイミングで詳しく調べる。

 デジタルカメラ市場はコンパクトデジカメとデジタル一眼レフに大別できるが、両者を合わせた世帯普及率は6割を超え、すでに「一家に1台」の時代から「1人1台」の時代に突入している。CIPA(カメラ映像機器工業会)の統計では、2006年の国内総出荷台数は942万台で、このうちデジタル一眼レフは7.6%を占める。購買層が多様化してきたため、今後は市場分析力の優劣がデジカメメーカー各社の競争の行方を大きく左右するだろう。

 ニコンは、2006年3月30日に発表した2006年度から2008年度までの3カ年計画の中で、「2008年度にはデジタル一眼レフで40%以上のシェア獲得を目指す」と宣言。現在の快進撃が続けば、40%以上のシェア目標は1年前倒しで実現する可能性が高い。