KDDIは10月から、内定者向けにSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の利用を開始した。対象となる学生は数百人。来年4月の入社前から内定者同士や会社とのつながりを密接にすることによって、エンゲージメント(会社と自身の成長のための行動を積極的に続ける意欲)を高めたり、内定辞退者を抑制したりする効果が期待できる。

 KDDIは、内定者への連絡事項を確実に伝えるための手段としても、SNSが効果的だと見る。「内定者がSNSに最後にログインした日時を見れば、会社からの連絡を見たかどうかが判断できる。このため、電話などによって連絡を見るように促せる」(同社人事部)

 このSNSは、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)サービスを活用している。掲示板やブログ、アンケート、イベント予約、プロフィール掲載などの機能がある。

 一般には、SNSは相手の表情が見えないまま文字だけで議論が白熱し過ぎてしまい、“場が荒れる”状態が懸念される。特に企業が商品のプロモーションにSNSを活用する際はそうだ。しかし、KDDIのような内定者と人事部に限定した利用であれば、その可能性は低いと見られる。むしろ会社側からすれば、内定者の性格や人柄を把握する参考材料にもなりうる。

 売り手市場と言われる今年は、従来以上にKDDIのような取り組みの必要性が高まっている。また、文部科学省の調査によると、1990年代前半は25%前後だった大学卒業の新入社員の入社後3年目までの離職率が、最近は30%を大きく上回る。若手社員の会社へのエンゲージメントを高めることは、多くの企業で人事部門の最重要課題の1つとなっている。