アサヒビールは2003年から、他社製品を含めた複数のビールブランドに消費者が抱くイメージを調べている。調査はインターネットを利用して1000人規模で毎年行ってきた。「連想ネットワーク」と呼ばれるこの取り組みを通じて、消費者がビールに求める価値(期待価値)、購入する際に重視する点(購入重視点)、ブランドイメージ、実際に購入したブランドという4つの次元がどのようにつながっているのかを定量的に捕捉し、マーケティングに生かそうとしている。

 図から読み取れるのは、例えば「うんちく・自己満足」という価値を求める消費者は、購入に際して「製法・原材料」を重視するということだ。そうした消費者の多くは「こだわり」というブランドイメージに秀でた、AやB、Cという製品を選ぶ、というものだ。

2006年度に行った「連想ネットワーク」調査結果の一部
2006年度に行った「連想ネットワーク」調査結果の一部
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 連想ネットワークという調査を毎年行うことで、自社やライバルのブランドイメージや消費者がビールに求める価値がどのように変遷しているのかが分かるという。調査を行っているのは、同社のお客様生活文化研究所。明治学院大学経済学部の清水聰教授の助けを借りている。

 同研究所のエグゼクティブプロデューサー主任研究員の尾崎一隆氏によると、かつて消費者はビールに期待していた価値は「ストレス解消」「陽気に盛り上がる」「のどの渇きを癒す」「会話が盛り上がる」「ゴクゴク飲める」という5つが中心にあった。2005年の調査からは「華やかな気分になれる」「香りを楽しむ」「見た目や音を楽しむ」といった付加的な価値が台頭してきたという。尾崎氏は「こうした新しい価値が重視される傾向がプレミアム市場の盛り上がりを生んでいる。最新の調査では、『カロリーが低い』『知的好奇心が満たされる』なども加わってきた」と指摘する。

 お客様生活文化研究所では毎年、調査を100ページほどのリポートにまとめ、商品開発担当者数十人を集めた報告会で、その年のトレンド分析を紹介している。この調査を生かすも殺すも、マーケッターの手腕にかかっている。