通信サービス会社の光ケーブルやメタルケーブルなどの敷設工事大手の協和エクシオは、フィールド業務の完全なる「見える化」を実現した。NTT東西の通信線路工事を担当するすべての施行班にタッチパネル式でノートサイズの携帯情報端末を配布。NTTドコモの携帯電話機「FOMA」をこの端末に接続し、インターネット経由で、工事の進ちょく状況のデータを協和エクシオが保有するサーバーに工事現場から日々書き込む。さらに、作業の品質管理のために、主要な作業個所を携帯電話機のカメラで撮影してサーバーへ送るようにした。

 新システムの名称は、日締め出来高管理システム「EDI-DP」。協和エクシオは昨年からEDI-DP対応携帯情報端末を段階的に導入していき、この7月にはNTT東西から発注されたすべての施行現場で利用できるようになった。携帯情報端末は全国で約600台導入している。

協和エクシオが導入した、日締め出来高管理システム「EDI-DP」。 協和エクシオが導入した、日締め出来高管理システム「EDI-DP」。
工事現場にいながらにして、携帯情報端末と携帯電話機を使ってサーバーに接続し、工事の作業手順の指示を受けたり、作業状況の進ちょくを報告したりできる。

 EDI-DPの導入によって、工事の進ちょく状況のスピーディーな把握、工事の手戻りの解消、資材の在庫の適正化、適正な要員配置、発注先への工事情報の開示、工事品質の日次チェックの実現などの効果が得られる。

 EDI-DP導入前は、1つの工事案件に対して多数の紙の設計図と作業手順書を使っていたうえ、進ちょく報告はある程度まとめて実施していた。このため、作業から何日か経過してからミスが見つかると、対処に多大な手間がかかっていた。現在は設計図も作業手順書も電子化してEDI-DPと連動させ、作業品質のチェックも日々実施しているので、こうした手戻りはなくなった。いまや、どの工事現場でどの施行班がいつどこに何本どんな資材を使った電柱を建てたか---といった細かな情報まで即座に調べられる。

本格導入までに地域特性を考慮して3年かけた

 協和エクシオは、EDI-DPの本格導入までに3年以上もの月日を費やした。同社は協力会社と一緒に工事を手がけることが多く、地域ごとに細かな仕事の進め方に差異があった。そこで、全国9カ所の支店のそれぞれから1人以上の社員を集めてプロジェクトチームを結成。標準的な業務プロセスを確立させたのである。

協和エクシオの高橋輝幸取締役アクセスエンジニアリング本部長
協和エクシオの高橋輝幸取締役アクセスエンジニアリング本部長

 これまでは、設計図に示されている通りに作業をせず、施行班が現場で作業のやり方を変えてしまい、工事前の設計図と工事後に書き直した設計図に差異が見られるケースが少なくなかった。しかし、これでは協和エクシオの本部や支店が、多数の工事の進ちょく状況を即座に把握できない。「最終的に設計図を作り直せば済むというのではなく、最初に作った図面通りに作業をすることが大切。このことを全員に納得してもらうのはたいへんだった」と、アクセスエンジニアリング本部長の高橋輝幸取締役は明かす。

 設計図自体も、以前はその一部を協力会社が作成しているケースがあった。EDI-DPの本格導入に伴い、設計作業はすべて協和エクシオが担う体制に変えた。

 協和エクシオがNTT東西から受注する工事業務には、主に宅内工事と屋外工事の2通りがある。宅内工事なら1つの施行班が1日に5~6件処理できる。一方、屋外工事の場合は短くても1日、長ければ半年かかる。施行班が保有するEDI-DP対応携帯情報端末には日々、作業手順の指示が通知される。

 EDI-DPの導入効果は、協和エクシオ側には明らかだ。しかし、実際に屋外でEDI-DPを利用するのは、工事の外注先となる協力会社の人が大半を占める。約600台導入したEDI-DP対応端末の9割は協力会社が使う。だが、そこにはこうした情報機器の利用が苦手な人も少なくない。

 そこで協和エクシオは、EDI-DP対応端末の使い方を知ってもらうために全国に30社弱ある協力会社を訪問し、施行班の班長を集めて、目の前で操作方法を実現してみせた。詳細なマニュアルも配布した。また、「何日も経ってから作業を手直しするといったムダがなくなるし、毎月の仕事量や資材の消費量を正確に把握できるようになる」などの利用メリットを詳しく何度も説明してまわったという。工事で使う資材はケーブルや金具やボルトなど数千以上の品目があるため、在庫適正化の意義は大きい。