9月10日に発売された書籍『楽天市場公式 ネットショップの教科書』
9月10日に発売された書籍『楽天市場公式 ネットショップの教科書』

 楽天は9月10日、同社の電子ショッピングモール「楽天市場」におけるネット店舗の運営ノウハウを網羅した書籍『楽天市場公式 ネットショップの教科書』(発行はインプレスR&D)を発売した。楽天が公式の教本を発売するのは2001年以来、6年ぶりのことである。ノウハウ本を編集したのは、楽天市場に出店する2万店以上の出店者を対象にしてネット店舗の運営ノウハウを有料で教育している社内組織「楽天大学」を2000年1月に立ち上げた仲山進也学長だ。

 仲山学長は「2007年は楽天市場の開設からちょうど10年の節目の年に当たる。この10年で当社の成長のサイクルが一巡して振り出しに戻ったと感じており、社内では楽天が『2.0時代』に突入したと表現している。このタイミングで出店者にもう一度、店舗運営の基本である接客に立ち戻ってほしいと考えた。そこで楽天大学に蓄積された10年分の運営ノウハウを公開することにした」と語る。仲山学長は特に、「過去3年ほどの間に楽天市場に出店した人にこそ、本書を読んでほしい」と強調している。

 というのも、この3年は楽天のプロ野球参入と相まって、出店者数が一気に倍増した急成長期に当たる。楽天の知名度向上に乗って、それ以前の出店者ほどは苦労せずに店舗の売り上げを伸ばせた出店者が多かった。しかし、最近は成長も一巡し、月商が頭打ちになってきた出店者も出始めているという。それがこのタイミングでノウハウ本を出版するきっかけの1つになった。

 仲山学長は過去10年間の楽天市場における「出店者数の推移」を振り返り、興味深い事実を発見したと明かす。それは開設から5年目の2001~2002年に、楽天市場は早くも一度成長の踊り場を迎えており、出店者数が5000店を超えたあたりで、その伸びが2年間ほど停滞していたのだ。その時が楽天市場の最初の転換期となり、楽天は2002年4月に楽天市場に新しいビジネスモデルである出店者の売上高に応じた「従量課金」を導入した。これが結果的に楽天市場の第2ステージ「1.5時代」の幕開けにつながった。そこからの次の5年間で楽天市場は新たな成長を加速することができ、10年目の2007年に「2.0時代」を迎えることができたのである。

 5000店ほどで停滞していた出店者数は2003年から急激な上昇カーブを描いて増え始め、2004年10月には1万店を突破。同時期に楽天のプロ野球への参入が決定すると、第2の成長に拍車がかかり、1万店突破から3年足らずの2007年6月に2万店まで駆け上がった。過去5年で出店者数は4倍になったのだ。2007年6月末には楽天の会員数も3000万人を超えている。

 特に直近の3年間は楽天の第2の成長が急加速した時期であり、この期間に出店した人は「接客の基本をきちんと学ばないままに、勢いだけで成長できた側面もあった」と、仲山学長は冷静に分析する。そこで今回のノウハウ本を読んで、自社に欠けている接客部分を再確認してもらいたいというのが仲山学長からのメッセージだ。

 本書は楽天が2001年6月に出した書籍『楽天市場直伝 EC商売繁盛60の秘訣』の改訂版であるが、内容の多くは今でも2001年当時のままで十分に通用するものが多く、あえて更新しなかった部分が多かったという。「動きの早いインターネットの世界に身を置きながらも、商売における接客の基本はいつの時代も変わらないことが、この6年ではっきりした」(仲山学長)。

 本書では、楽天市場での成功のサイクルを「集客(店舗のページを顧客に知ってもらう)→参客(顧客のメールアドレスを集める)→接客(顧客との信頼関係を築く)→増客(ファンを増やす)」の4ステップで表現している。これは楽天大学で教える内容の基本中の基本であり、2000年の楽天大学の開校当初から全く変わらないものだ。仲山学長は「本書の大部分は3番目の接客について説明しており、これは店舗とネットの違いに関係ない商売の基本そのものだ」と解説する。

 1番目の集客は、アフィリエイトサービスの浸透やブログの普及などで今も日々進化を続けているが、「そうした入り口のテクノロジーだけを知っても商売は成り立たない。それよりも出店者にはもっと接客技術を磨いてほしい。パソコンの操作方法を全く知らなくても接客の良さで楽天市場で成功した出店者はたくさんいるが、その逆の出店者はいなかった」というのが過去10年で得られた結論だ。

楽天大学も開校から7年で見直し

今回のノウハウ本を編集した楽天大学の仲山進也学長
今回のノウハウ本を編集した楽天大学の仲山進也学長

 仲山学長は本書の発売に先立ち、2007年1月に楽天大学の教育メニューの体系を変更している。新体系「楽天大学2.0」では、出店者の成長フェーズに合わせて、新たに用意した「スタートダッシュ」に加え、従来からある「コア」と「アドバンス」の3コースを用意している。楽天大学は今後、実践編のコアと応用編のアドバンスにリソースを集中していく計画で、スタートダッシュの受講者には今回の書籍の併読を勧めていく。2001年に発売した前書は3~4年前に売り切れた後は増刷されておらず、今回初めて手にする出店者も多いと考えられる。2万店ある出店者の半数が1冊ずつ買うだけでも1万部の売れ行きを見込める。

 もともと楽天大学は、自社だけの店舗運営に最初の行き詰まりを感じた出店者に、改めて運営ノウハウを提供する教育機関としてスタートしたものだ。そのため、学習カリキュラムは店舗運営をある程度経験し、少なからず辛い思いをしたことを前提に組み立てられている。それが今でいう実践編の「コア」コースだ。しかし、ここ数年は出店者の急増から、いつしかコア本来の位置づけが崩れ、初心者向けの入門校になってしまっていた。

 だがカリキュラムは従来通りのため、自分自身で苦労する前にいきなりコアの講習を受けても、「内容が自分の腹に落ちない出店者が多く見受けられた。接客は一足飛びには身につけられない」(仲山学長)。そこで楽天大学の受講前に今回の書籍で自習してもらえれば、理解が深まるという。

 逆に、上級者向けのアドバンスは、ノウハウ本では触れられていない出店者社内の「店舗経営戦略の立案」や従業員の増加に伴う「チームビルディング」といった、出店者自身の会社運営や従業員全体での接客レベルの底上げなどに焦点を当てた高度な講座が用意されており、大学の名にふさわしい内容になっている。

■変更履歴
訂正:楽天からの申し入れにより、第3段落と最後から2番目の段落の一部を修正しまし た。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2007/09/21 16:00]