豊田通商が、顧客の価値観や心理などを簡単に分析できるシステムを開発した。自社で活用するほか、トヨタ自動車系列のサプライヤーらに提供し、トヨタグループのマーケティングの改善活動に乗り出している。

 システムの名称は「CLAS」(Customer Lifestyle Analysis System)。日本人の数多くのデータを基に、ターゲット顧客の意識や趣味などを分析するものだ。

 基となるデータは「ライフスタイルインディケーター」と呼ばれるもので、リンクアンドモチベーション(東京・中央区)が保有している。30年間にわたり毎年6000人にアンケートによる調査を行ってきたものだ。

 6000人は「積極的高付加価値志向/日常的基本価値志向」「感覚的個性志向/論理的様式志向」というを2軸上に分布されて、「アチーブ型」「プレジャー型」「ヘイオン型」といった8つのタイプに大別される。それぞれのタイプの価値観や好きなブランド・テレビ番組、よく読む新聞・雑誌、趣味・関心ごとといった多種多様な項目がわかる。サイコグラフィック(心理的)属性に重点を置いたマーケティングを展開する際には非常に有益なデータとなる。CLASでは30年分ではなく、このうちの最新データを使って分析する。

左:「CLAS」開発に携わった豊田通商自動車資材部企画グループの新井貴之課長代理、村井義之グループリーダー、加瀬康晴主事 右:消費者6000人分の価値観や趣味などを様々な切り口で見られるマーケティング分析システム「CLAS」の画面

 このデータを2003年にまず活用したのは、自動車資材部だった。シートやカーペット、ハンドルなどの素材の開発や調達を手がける際の手がかりとした。もちろんトヨタ自動車からは開発している製品のターゲット層に関する情報は伝えられる。同部が求めたのはより深い顧客理解だ。デザイナーでもある加瀬康晴主事は、「日本人全体の価値観をとらえているデータだった。全体をとらえているから対象となる層の位置づけもはっきりしていくる」と話す。ターゲット層の価値観や好きなブランドがわかれば、自動車の内装に使う素材も当然変わってくる。

 翌年、自動車資材部は一方的にデータを分析リポートとして受け取るのではなく、自分たちで分析できる仕組みを作りたいと考え始めた。簡易分析システムがあれば、同社はもちろん自動車メーカーや部品メーカーも利用が可能になる。3者が顧客イメージを共有することが大切と判断した。「商社として単純に資材を流すだけではなく、ものづくりのプロセスを改革しようとした」と新井貴之課長代理は狙いを話す。

 豊田通商はこのシステムを自社で使い始めてから、1~2カ月かかっていた商品の企画期間を2週間程度に短縮することができた。2005年夏にはCLASをトヨタ自動車の担当者にも見せており、現在、複数のサプライヤーが同システムを活用中だ。加瀬主事が「誰でも使えるようにするため、使い勝手にはこだわった」と話すように、非常に汎用性の高いものに仕上がった。自動車業界以外へのシステムの外販も検討している。