日本ロレアル人事本部人材・キャリア開発グループの曽我一夫シニアマネージャー(左)と井上麻衣子新卒採用担当
日本ロレアル人事本部人材・キャリア開発グループの曽我一夫シニアマネージャー(左)と井上麻衣子新卒採用担当

 「ロレアル パリ」「メイベリン ニューヨーク」「ケラスターゼ」「ランコム」「ヘレナ ルビンスタイン」「ジョルジオ アルマーニ」など多数のブランドを抱える世界最大の化粧品会社、仏ロレアルグループ。2001年にスタートさせた学生向けオンライン・ビジネスゲーム大会「ロレアルe戦略チャレンジ」を、日本法人である日本ロレアルも今期からより一層積極的に展開している。

 ロレアルe戦略チャレンジは、大学や大学院やビジネススクールの学生3人で1チームを作り、経営陣となって架空の化粧品会社を運営し、株価を競う経営シミュレーションのコンテスト。第7回となる今回は、ドットコム企業を含む5つの会社と競争しながら、自身の化粧品会社の株価をいかに高めていくかというゲーム内容だった。ブランド管理や販売チャネル管理、研究開発、マーケティング、CSR(企業の社会的責任)、ウェブサイト活用などの観点から、ヒト・モノ・カネをどう動かしていくかを考える。

 ロレアルグループはこのコンテストを2001年から毎年開催してきた。最新の第7回大会は、2006年9月28日~2007年2月20日の期間に地域大会をインターネット上で開催。世界8地域で1位となったビジネススクール部門と大学生部門の計16チームは、パリで行う決勝戦と授賞式に参加した。

 第7回ロレアルe戦略チャレンジの地域大会は、1回戦、2回戦、準決勝の3ステップとなっていた。日本ロレアルは、1回戦通過者に対して2008年度総合職新卒採用の第一次選考を免除した。また、今大会から初めて「アカデミック チャレンジ」を導入。これは、同ゲームを授業の教材として大学やビジネススクールに提供する制度で、地域大会の1回戦と2回戦での選考を免除される。まず上智大学が採用した。

 このe戦略チャレンジには、2001年から2006年までの計6回の大会で、125カ国以上にある2190校の大学やビジネススクールから、13万人以上の学生が参加。日本からは累計で3159人が参加し、うち8人が日本ロレアルに入社している。

経営やマーケティングに関心のある人材を採る

 日本ロレアルの曽我一夫・人事本部人材・キャリア開発グループシニアマネージャーは、「ロレアルという社名の認知度を高めることと、化粧品ビジネスの面白さを若い人に知ってもらうためのもの」と、e戦略チャレンジ導入の狙いを語る。この仕組みは人材採用手法として世界中の多くの会社からうらやましがられているという。

 ロレアルグループが大規模な採用の仕組みを作った背景には、「企業は人中心でまわる。各人の個性を生かすことで組織を強くしたい」というフランス本社の考えがある。このため、人事戦略面では採用に一番力を入れている。「業務プロセスを標準化し、均一的な人材を好む米国系企業とは違う」(曽我シニアマネージャー)

 ロレアルグループには、e戦略チャレンジ以外にももう1つ、グローバルに展開している人材採用向けのビジネスゲームがある。「ロレアル ブランドストーム」と呼ぶそれは、フランス本社で1993年から、日本では2004年からスタート。2007年大会は2月~6月に開催した。

 ブランドストームは、与えられた共通課題に対するマーケティング戦略を立案し、ロレアルの経営幹部や大手広告代理店幹部などの前で発表するコンテストだ。発表内容は、市場分析、新製品や新サービスとその革新性、広告とプロモーション方法、製品ポートフォリオなど。国内大会は日本語でスピーチし、国際大会では英語を使う。今年の課題は「ニューヨークに拠点を置く美容室向けヘアケアブランド『レッドケン』のブランドマネージャーとして、男性向け製品『レッドケン フォー メン』が、美容室業界における男性用ブランドでナンバーワンとなるためのマーケティング戦略を立案する」だった。

 今回は、日本では慶應義塾大学、千葉大学、上智大学、東京大学、早稲田大学から22チーム66人が国内大会に参加。ここで優勝した千葉大学のチームが、6月14日にパリに行って国際大会に臨んだ。「国際大会では英語のハンディーもあって優勝できなかったが、千葉大学のチームの戦略にはサロンへの新しい提案があり、男性の来店頻度を促す内容だった点が高く評価された。日本国内の他のチームの戦略の多くは、サロンではなく百貨店向きであるものが多かった」(日本ロレアルの井上麻衣子・人事本部人材・キャリア開発グループ新卒採用担当)

 ブランドストームは、マーケティングに関心のある人材に対して化粧品会社のビジネスの面白さを伝えて、有望なマーケティング人材を確保するために実施している。自由参加型のe戦略チャレンジとは違って、提携大学のマーケティングゼミに所属する学生チームだけが参加できる。

 今年のブランドストームには、35カ国から200大学4400人以上が参加。優勝したシンガポール国立大学の学生チームには、1万ユーロの世界旅行がプレゼントされた。また、日本ロレアルはブランドストームとe戦略チャレンジの2つの採用ツールを通じて、約30人の新卒学生の採用を予定している。