写真の制作および写真ストックの提供サービスで最大手のアマナが、「さわやかな」「若々しい」「ワイルドな」といった形容詞で写真を検索できるサービスを開始した。

 顧客であるデザイナーや広告代理店、企業の広報や販促担当者などは、アマナのグループ会社であるアマナイメージズ(東京・品川区)が運営する検索・販売サイト「amanaimages.com」で利用が可能だ。検索システムの名称は「EVE」(Emotional Visual Search Engine)。

 従来、膨大な写真ストックを持つアマナが顧客に提供していた検索手段は、「人物」「風景」「スポーツ」といったカテゴリーや写真の内容を表すキーワードが主なものだった。2006年12月に構図と色で検索する仕組みも導入したが、主な顧客であるデザイナーやクリエイターらが必要としていたのは「感性検索」だった。

 例えば、あるデザイナーが広告に雄大なイメージを打ち出すために山の写真を使おうとする。そのデザイナーは「山」というキーワードで検索するが、「雄大な」という形容詞で検索できれば便利だ。この場合、大切なのは山ではなく、消費者の感性に雄大なイメージを与えることだからだ。

 アマナの商品写真研究所の菊池英雄ビジュアルディレクターは、「クリエイターはあいまいな言葉を使う。そのあいまいな言葉のままで検索できる仕組みを作ろうとした」とEVE開発の狙いを話す。

 菊池氏が開発のプロジェクトを率いることになったのは2004年ごろ。参考にしたのは日本カラーデザイン研究所(東京・文京区)の「イメージスケール」と呼ばれる手法。あらゆる色と形容詞を「WARM/COOL」「SOFT/HARD」という2つの軸で表すというものだ。色彩をマーケティングに生かす際の参考となる。

 菊池氏らプロジェクトチームは同研究所の協力を得て、写真で同じことをやろうと取り組んだ。ただし、色より構成する要素がはるかに多い写真で同じことをするのは難しい。そこで、「ADVANCE/POPULAR」という3つ目の軸を加えた立体の座標軸にあらゆる写真を配置するという方法に至った。前者は「非日常、抽象的、主観的で個性的」、後者は「情報的、親しみやすく日常的・記録的、客観的」を表す。

 3つ目の軸を定めた後は、印象という定性的な基準を基に写真を分類するうえでのルール作りに取り組んだ。「1年以上はかかった。会議でも参加者が同じ写真を座標軸上の異なる地点に置こうとして何度も話し合いになった。10人いたら10人が納得するものを作りたかった」(菊池氏)。

 現在、写真を分類する際には手作業か、もともと各写真にもともと割り振られていた形容詞を使うことになる。菊池氏の今後の目標は、コンピュータで自動的に写真を座標軸上に振り分けるシステムの構築だ。中央大学ヒューマンメディア工学研究室との共同開発で、ほぼ完成に近い。今後はより精度を高めていけば本格的な利用が可能だという。

 アマナのEVE開発の背景には、企業のマーケティング担当者らが何とか消費者の琴線に触れる販促物を作りたいという思いがある。これまでは勘や経験といった分野が大きかった。あらゆる写真とその写真から受ける印象を完璧にひも付けることができたら、広告制作の現場で大きな変革が起きそうだ。