今年6月まで28カ月連続で前年対比の売上高を伸ばし続けている東急百貨店(東京・渋谷区)の渋谷駅東横店。渋谷駅に直結した好立地を武器に、18時以降の通勤帰り客を対象に営業力強化に取り組んできた。その強化策の一つが、2006年度から開始した「売場改革プロジェクト」である。販売員が売り場での接客に集中できる環境作りを主眼としたプロジェクトである。

 このプロジェクトの運営で中心的な役割を果たしているのが、「渋谷サポーターズ(渋サポ)」。複数の部署にまたがる課題解決を担当するために結成した専門部隊である。今年度は、渋サポ活動をさらに加速させるために後方業務を担当する管理職11人を全員参加させて改善活動に取り組むとともに、対象活動も3分野から6分野に拡大した。

 これまで販売員が売り場に専念できなかった背景には、売り場での事務作業が増え続けていたことがある。「後方支援部門との役割分担が不明確であったため、販売員に負荷がかかってしまっていた」(星野秀樹・常務東横店長)と振り返る。

 この問題を解決するために、伝票起票といった後方業務を専門に担当する業務センターの改革を進めた。伝票作成や配送品の梱包といった31の業務を売り場から引き受け、集中して業務処理する体制を築いた。1日4回各売り場事務所を巡回することで、売り場から離れなくても業務センターへ依頼できる。販売員が担っていた年間4万3845件、約3万1000時間分の作業を業務センターが受託した。返品作業を例にすると、店内移動だけで往復30分もかかり、検品所での作業も含めると1時間売り場を離れなければならなかった。新体制では、こうした時間を売り場に振り向けられるようになった。

 渋サポが課題解決する課題は、自部門だけで解決できないものである。1テーマにつき、約12回の会議を開く。店長直轄組織にし、3カ月以内に結論を出すことを求めている。解決した課題は、「渋サポニュース」と呼ぶチラシを発行し、店内に周知する。これまでに13号を発行した。

 併せて、渋サポの活動を通して、販売マネジャーの業務を見直した。売り場に立てる時間を増やせるようにするためだ。具体的には、会議を見直すとともに、取引先からの派遣店員の受け入れ業務を改革した。これまでは営業企画といった後方部門がそれぞれバラバラに会議の予定を送っており、「重複した日程を組んでいたこともあった」(東横店営業改革の伊藤正貴担当マネジャー)という。出席すべき会議数を減らすとともに、各部門の会議情報を一元管理するようにした。派遣店員の受け入れ業務では、店内の規則や地図などこれまで口頭で伝えていた内容を1冊にまとめた。入退店に伴うバッチの管理や店内の規則などを口頭で伝えて理解してもらう必要があるのだが、これが販売マネジャーにとって大きな負担となっていた。東急百貨店では、これらの取り組みを他店へ展開していくことを検討している。