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阪急交通社は新聞広告に掲載した旅行コースをホームページでも一覧表示して予約しやすくしている

 通信販売を主体とする旅行代理店の阪急交通社(大阪市)が、インターネット販売を拡大させている。2004年度に取扱高245億円、取扱人数37万人だったインターネット販売は、その後毎年伸び続け、2006年度には同368億円、58万8000人まで拡大した。2007年度は同400億円、60万人を計画している。

 インターネット販売の取扱額が400億円に達すると、今期の総取扱額の目標である約4000億円の10%を占めることになる。そうなると、インターネット販売はコールセンターに次ぐ、同社の2つ目の大きな販売チャネルに成長したことになる。

 阪急交通社の旅行販売の特徴は、「新聞広告」による集客がメインである点だ。店舗販売よりも、新聞広告を見た顧客からのコールセンターへの電話が最大の販売チャネルになっている。全国に広く店舗網を構える競合のJTBやエイチ・アイ・エスとは、その点が大きく異なる。

 2006年度は新聞広告の出稿量で日本一を記録し、阪急交通社は全国紙だけでなく地方紙にも幅広く旅行商品の告知を掲載している。しかも新聞広告で紹介するのは、同社が選び抜いたパッケージ旅行だ。これまでは新聞広告を見た顧客がコールセンターに電話をかけてきて旅行を予約するのが通例だったが、最近はそれに加えてインターネット経由の予約が増えてきた。

 同社はホームページでも新聞広告に掲載した旅行コースを一目で確認できるようにしており、ここから24時間予約を受け付けている。顧客はコールセンターの営業時間を気にせずに、インターネットからいつでも旅行の予約ができる。

新聞を読まない世代にも告知できる

 インターネットで予約する顧客を調べてみると、約60%は既存の顧客だったが、残りの40%は新規顧客である。阪急交通社は、後者の40%に特に注目している。「新聞を読まない顧客層にも、インターネットや携帯電話を通じて当社の旅行商品を紹介できる手立てができた」(小谷晃一・営業統括本部営業企画部ウェブ販売促進課長)。

 旅行やホテルを予約する際に、インターネットで情報収集するのは、今や常識になりつつある。新聞を読まない顧客層の大きな情報源はインターネットや携帯電話であり、旅行の情報をインターネットで検索している最中に阪急交通社のホームページを見つけ、そこから予約を入れてくる顧客が増えているのは確かだ。阪急交通社にとって、「新聞広告が当社最大の告知媒体であることに今後も変わりはないが、若者を中心に新聞離れが叫ばれるなかでは、新しい告知媒体を開拓していく必要もある」(小谷課長)。

 ただし、悩ましいのは、「新聞広告は掲載日に電話が何本きたかで、広告に対する顧客のレスポンスがはっきりつかめるのに対し、インターネットはその点がまだ分かりにくいことだ」(尾方幸弘・営業統括本部営業企画部ウェブ販売促進課担当課長)。顧客の反響が分かりやすい新聞広告に慣れた阪急交通社にとっては、レスポンスの見極めがインターネット販売の課題である。

 阪急交通社は新聞広告ではできない、インターネットならではの情報提供も検討し始めている。掲載内容をいつでも更新できるインターネットの特徴を生かし、「旅行の催行決定日を随時更新していくことで、希望日時に出発できるかどうか分からないという顧客の不安を取り除いていくことを考えている」(尾方担当課長)。

 団体でのパッケージ旅行の場合、顧客から予約を受け付けても、その出発日に規定の「最少催行人員」が集まらなければ、ツアーは実施されないことになっている。そのため、同社のコールセンターには顧客から「催行確定」を確認する問い合わせの電話が数多く寄せられるのが常だ。問い合わせが多ければ、それだけ多くのオペレーターを確保しなければならず、人件費にも響いてくる。そこで、催行確定情報をインターネットに随時掲載して問い合わせの電話件数を少しでも減らすとともに、必ず催行される出発日を明確に示して顧客には安心して予約を入れてもらう。