日本通運は、2008年5月から半年間かけて、集配担当者の業務端末2万台を刷新する。

 新端末の名称は「DREAM」。運賃計算といった業務端末として利用できるほか、本部との情報をやり取りするための通信機能や携帯電話の機能も備える。同社によると、宅配便業界で音声と通信用を統合した端末を採用するのは日通が初めてという。

 新端末導入により、これまで集配担当者は、音声用と情報通信用に2台の携帯電話を持ち歩いていたが、業務用端末だけで済む。端末は富士通製で、投資額は30億~50億円とみられる。2008年2月に特定の地域で実験して不具合を洗い出し、5月の本稼働に備える予定となっている。日通は新端末の導入で、顧客サービスの向上と業務の効率化を狙う。

 新端末では、本部から集配担当者への指示がリアルタイムにできるようになる。現行の業務端末では、集配担当者が「通信開始ボタン」を押さなければ情報のやり取りができなかった。顧客からコールセンターへ集荷や再配達依頼があっても、現場の集配担当者へ情報を伝達できる間隔が不定期だった。そこで、新端末にはデータ通信用のモジュールを装備し、担当者が操作することなく指示を出せる仕組みにする。

 顧客の軒先における業務効率の向上も図る。軒先で荷物を受け取るまでの時間を短縮するため、端末の画面設計を工夫する。

 現行の端末は往復便や時間指定などサービスが多様化してきたことに伴い、完了までに画面を何度も切り替えなければならなかった。具体的には、運賃を決めるまでに、届け先の地域やサイズといった共通に必要な情報のほかに、「往復便では必要であるが、通常便には必要ない」といった特定のサービスだけ必要な情報がある。特定のサービスだけ入力が必要であっても、表示しなければ次に進めない設計だった。「プログラムの追加の連続で、複雑になってしまっていたことが原因」(IT推進部の足立実久雄課長)という。

 そこで画面設計を見直し、どの集荷でも必須の項目を上位に表示できるようにした。特定のサービスでしか必要のない項目は、端末の画面を下にスクロールすれば見えるように変更する。

 さらに現行端末で使い勝手が悪かったのが、基本情報が足りない際の入力だった。送り状によっては、郵便番号が入力されていないケースもある。郵便番号によって地域を特定し、運賃や配送センターが決まるため必須の情報である。これまでは集配担当者が端末内に蓄積された情報から郵便番号を検索しなければならず手間取っていた。そこで、音声認識技術を活用して入力の手間を省くことを検討中である。

 こうした端末刷新の原案は、集配担当者約300人から現行端末の不満点を約500件集めて作ったもの。「バッテリーの容量の問題など解決しなければならない課題は多いが、できる限り集配担当者の負担を軽くしたい」(ペリカン・アロー部魚村三郎課長)という。