富士重工業は、ストレージ装置に備わるリモート・ミラーリングの機能を利用し、基幹システムのデータ保護に取り組んでいる。さらに、3~4年後をメドにメインフレームを遠隔地にも設置し、災害が発生しても、素早く事業を継続できるようにする。

 現在、対象とするシステムは2種類ある。人事・財務システムと生産管理システムだ。いずれもメインフレームで稼働し、すべてのデータは1台のストレージ装置に集約している。

 同社がリモート・ミラーリングを採用したのは、「テープやアプリケーション・レイヤーによる災害対策よりコストも安く、リストア時間を短縮できる」(情報システム子会社であるスバルシステムサービス電算部電算2課の茂木一啓課長)と判断したからだ。今回、リモート・ミラーリングの仕組みを構築するのに要した費用は約8000万円(本誌推定)。これをテープで実現すると、1億円以上の費用がかかる見積もりだった。

 ミラーリングとは、ディスクに格納されているデータそのものを複製する仕組み。同社は、同一装置内でデータを複製するだけでなく、複製データを遠隔地にも転送する方法を採用した()。夜間のバッチ処理が終了した時点で遠隔地にデータを転送する。「当社の生産管理は、バッチ処理を中心に成り立っているため、現状では1日に1度の転送で十分と判断した」(茂木課長)。 同社がまず着手したのは、ストレージの統合だった。2005年に先行して生産管理システムのデータを統合ストレージに移行。ここでリモート・ミラーリングを試行し、災害対策として機能すると判断した。次に07年3月に、人事・財務システムのデータも移行。さらに5月末には、社内に300台強あるオープン系サーバーのデータまで統合した。

図●富士重工業が構築したリモート・ミラーリングの仕組み
ストレージを統合し、リモート・ミラーリングによってデータを災害から保護している。2010年~2011年ごろまでにリモート・サイトにもメインフレームを設置する予定である

 ただし、不十分な点が2つある。1つは、リモート・サイトにメインフレームがないこと。これは現在、本番サイトのメインフレームの刷新を計画しているためだ。本番サイトの環境が整い次第、リモートにも導入する。

 2つめは、オープン系サーバーのデータについては、リモート・ミラーリングを実施していないことだ。オープン系サーバーは主に、購買システムやファイル・サーバーで利用しており、すでにデータ量は2テラ・バイトに達する。「いくら有効でも、大量のデータを転送するにはネットワーク帯域を増強しなければならず、現状ではコストに見合わない」(茂木課長)。今後、オープン系サーバーのアプリケーションを見直したり、サーバーを集約したりといったことから対策を打つ予定だ。