中央省庁で災害時に業務を止めない事業継続計画(BCP)の策定の動きが本格化している。内閣府が中央省庁向けにBCP策定のステップや注意事項を記したガイドラインを作成中。今夏までに公開し、各省庁がそれに基づいてBCPを策定する見通しだ。

 これまでも災害時の対応を記したものはあった。各中央省庁とも、災害対策基本法に基づき、「防災業務計画」を策定済みである。ただ、防災業務計画は、災害発生時に管轄業界に対してどう指示を出すかが中心。証明書発行などの窓口業務や、国家試験を開催中の場合はどうするかなど、一般業務は対象としていなかった。

 今回、内閣府が提示するガイドラインは、こうした一般業務も含めたBCPの策定を求める。「事務サービスにも国民生活に支障を来すものがあるはず」(内閣府の政策統括官付地震・火山対策担当の伊藤夏生参事官補佐)との考えからだ。さらに、省庁間や取引先に当たる民間企業との業務連携についても求める。各省庁が独自のBCPを策定しても、他の省庁の協力が得られなかったり、取引先からの物品納入やサービス提供が停止すると、業務の継続が滞りかねないとの理由からである。

 内閣府の動きに各省庁とも同調する。例えば、経済産業省や総務省、厚生労働省は「今のところBCPは策定していないがガイドラインを参考にBCPを策定していきたい」との考え。すでにBCPの策定に乗り出している国土交通省も、「内閣府のガイドラインと内容をすり合わせていきたい」(河川局災害対策室)とする。

 BCPを念頭に置いた情報システムの対策で先行するのが経済産業省だ。同省は、電力やガスといったライフラインの事業会社を監督しており、非常時には事業者から情報を収集し、的確な指示を下すことが求められている。このため「まずは災害対策の業務に絞って、情報システムを二重化した」(経済産業省大臣官房情報システム厚生課の大東道郎課長補佐)。傘下の原子力・安全保安院や特許庁、中小企業庁など、経産省全体で利用する。こうした「全省で使う情報システムについて災害対策に取り組むのは中央省庁では初」(大東課長補佐)だという。

 二重化したのは、電子メール・サーバー、ファイル共有サーバー、Webサーバー、データベースサーバーの4つ()。沖縄県のデータセンターにバックアップ・サーバーを置き、今年3月5日から稼働を始めている。東京のメインサーバーが被災しても、沖縄のバックアップ・サーバーを使って防災担当官がメールで連絡を取り合ったり、被害状況の画像ファイルを共有したりできる。Webでは電力やガスなどインフラの被害や復旧状況を公表する。

図●経済産業省が3月に導入したバックアップ・システム

 非常時には沖縄県の出先機関の職員がデータセンターに出向き、システムを起動する。切り替えにかかる時間は「数時間から半日」と明確な数値を掲げていないが、「極力早くしたい」(大東課長補佐)という。

 内閣府や中小企業庁は民間企業に向けガイドラインを公表し、BCPの策定を呼びかけている。“紺屋の白袴”にならぬよう各省庁や省内での連携が求められる。