アサヒビールが洋酒分野で、ICタグを活用した出荷拠点内の作業効率化に取り組み、成果を出し始めている。

 今年2月から、まず中部地区のウイスキーなど洋酒類を配送先別(卸など)に仕分けする出荷拠点で、ICタグを活用してきた。ピッキング作業時間の短縮によって、人件費など年間1500万円のコスト削減ができるようになった。

 アサヒビールは、旭化成の焼酎・低アルコール飲料事業を買収するなどして、ビールだけでなく総合酒類メーカーになってきた。洋酒類はビールと異なり多品種少量であるため、新たな物流効率化手法を確立する必要があった。

 同社の洋酒類(ウイスキーやワインなど)は輸入品を含めて約1500種類ある。これらの商品をいったん東京・平和島の倉庫に集約し、注文に応じて全国各地区の出荷拠点(受入倉庫)へ翌日に配送している。

 各地区の受入倉庫では、卸など配送先ごとに仕分けする作業に課題を抱えていた。毎日、数十店から200種類を超える注文が入るうえ、日によって品種や配送先が異なる。そのため担当者は、東京・平和島から届いた商品を品種ごとに平置きした後、配送先の注文表を持って該当商品を探しながらピッキングしていた。

 輸入品の中には、バーコードがきちんと張られていないものがあるほか、商品名が似ていて分かりづらいなど、ピッキングの作業効率は悪かった。そのため、中部地区の受入倉庫から遠い北陸への配送については、注文を受けてからの配送が遅くなりがちだった。

 そこで、ICタグの活用で、各地区の受入倉庫の出荷作業を効率化することにした。具体的には「種まきピッキング」と呼ぶ仕分け作業を導入した。受入倉庫で配送先別の置き場を決め、そこに注文品を置いていく方式である。東京・平和島の倉庫を出る時点で、パレットに付けたICタグに商品情報を登録する。受入倉庫でICタグを読み取ると、パレットにどんな商品が積まれているかが分かる。その情報を基に配送別に仕分けていく。

 作業効率が向上したことで、中部地区から北陸への配送日は1日短縮したという。アサヒビールはこの中部地区の成果を受けて、2008年末までに茨城県など東日本にある3つの出荷拠点にも同様の仕組みを広げていく計画だ。

 このICタグを活用した物流効率化策は、経済産業省や国土交通省などが参画するグリーン物流パートナーシップ会議が選定した「平成18年グリーン物流パートナーシップ事業」の一環。アサヒビールの総投資額は3000万円だが、同事業から1500万円の補助金が出ている。ICタグに情報を書き込むタイプであるため、ネットワークなど各拠点に大掛かりシステムが不要である。ほかの拠点に展開する際には、約40万円する読み取り機を導入するだけでよいのも特徴だ。

 アサヒビール物流システム部の千田悠主任は、「物量が異なるのでまったく同じようには展開できないが、ビール物流への応用も考えていきたい」と語る。