リコメンド発注が軌道に乗り出したam/pmの店舗
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 コンビニエンスストア業界全体で店舗売上高(日販)の減少が続くなか、エーエム・ピーエム・ジャパン(am/pm、東京都港区)が「リコメンド(推奨)発注」で日販を伸ばしている。同社は2006年11月、関東圏にある約1000店舗を対象に、本部が加盟店に対して単品ごとの発注数を推奨する「リコメンド発注システム」を導入しており、それから約9カ月が経過した。この間、リコメンド発注に慣れた約60%の店舗では、日販が前年同期比で平均2%増加したほか、商品が売れ残ることで生じる廃棄ロスは同じく前年同期比で平均2%減少するという効果を確認した。しかも発注業務をシステム支援したことで、店舗での発注にかかる時間は従来の1日平均3時間半から1時間半にまで減っている。

 売上高が増えて廃棄が減れば利益は拡大するわけで、am/pmは「リコメンド発注に大きな手応えを感じている」(吉野健・SV本部SVマーケティング室副室長)。am/pmの前期の平均日販は約45万円だが、am/pmの相澤利彦社長は「当社は今期、コンビニ業界で唯一、平均日販を上昇させられる可能性がある」と意気込みを見せているほどだ。その切り札がリコメンド発注なのである。

来店客数の予測で単品の発注数を計算

 am/pmのリコメンド発注システムは、日本ユニシスがデータ・マイニングなどの統計手法を使って開発した。その大きな特徴は、毎日の「来店客数」を予測して、その人数に基づいて単品の発注数を計算することである。来店客数1000人当たりの購買点数を表す「PI値」の考え方がベースにある。だからこそ、来店客数の予測数値がすべての出発点になるわけだ。

 これまでの実績では、「来店客数の予測精度は94%と高く、この予測精度の高さが売上高の増加や廃棄ロスの減少につながっている」(鍛代勇一・経営戦略本部情報システム部マネージャー)。

 リコメンド発注システムは直近1週間の実績や、ここ2カ月間のトレンド、さらには3日前の天気予報などを基にして、3日後の来店客数を予測し、店舗にあるストアコンピュータに人数を表示する。この来店客数の予測人数を加盟店のオーナーが確認・修正した後に決定すると、来店客数の予測結果に応じて、弁当やおにぎりをはじめとする全商品、約2500~3000アイテムの単品の発注数をコンピュータが自動計算してくれる。来店客数が分かれば、自ずと売れる商品の数も見えてくるのだ。その数値を見ながら、オーナーや発注担当者は前日の午前10時までに単品の発注数を確認・修正することで発注業務が完了する。

 繰り返すが、am/pmのリコメンド発注でキーになるのは来店客数の予測であり、その予測人数に疑問を感じた場合は、店舗側で修正する。これまでのところ、毎回全体の約10%の店舗が来店客数の予測人数を微調整しているという。予測の当たり外れはともかく、この微調整にこそ、現場で働く人たちの知恵や経験が生かされる。

 am/pmは発注精度の向上や人手不足への対応を目的に、2005年秋からコンビニ業界の先陣を切ってリコメンド発注システムの開発を検討してきた。システム業者3社に開発を打診し、2006年2月には日本ユニシスをパートナーに選択した。同11月の利用開始に向け、本部のコスト負担で、店舗に従来からあるストアコンピュータにリコメンド発注機能を追加している。発注方法が従来と変わるため、ストアコンピュータの画面は大幅に変更を加えた。

 2006年11月のシステム稼働時に、am/pmはリコメンド発注で全店の平均日販を前期比で3%向上させると宣言した。まだ実績は2%の上昇なので目標には届いていないが、それでも縮小傾向にある現在の市場環境で日販が伸びた効果は大きい。システム稼働前のシミュレーションでは、日販が5~6%上昇する余地があるとの結果も出ており、am/pmはその検証を続けているところだ。