日本航空は、2007年度内をメドに新総合安全運航システムを開発する。日常運航の業務日誌などの文字情報や機体から収集できる情報などから、事故の芽を探し出してつぶすことが狙い。このプロジェクトは、経済産業省が次世代の検索・解析技術の開発を目指した「情報大航海プロジェクト」の一環。当面は同社だけで取り組んでいくが、将来的には鉄道会社や電力会社とともに研究に取り組んで汎用的な技術となることを目指している。

 これまでの安全対策は、事故や事故発生寸前の「ヒヤリハット」情報などから、原因を究明していた。新システムは、普段の運航日誌や訓練時に担当教官が作成した所見、機体から収集できる情報といったあらゆる情報を基に分析。運航乗務員はヒヤリハットだとも感じていないが、条件が異なれば事故になりかねない危険因子を見つけ出して対策を講じていく。危険因子とは、機材故障や気象条件や飛行時間帯といったもの。「機材故障で遅れても天候が良かったために通常運航」であれば問題ないが、悪天候であったり指令センターとのやり取りのタイミングが悪いといった乗務員の心理状況が異なれば組み合わせ次第では事故となってしまう可能性を秘めているものである。

 新システムは、これらの要因が事故につながる因果関係の影響度を、画面に表示する線の太さで示す。機種別といったモデルを1年間かけて作り、線の太いものから対策を講じてつぶしていく。「乗務員は経験による感覚論に陥りがちになる。定量的な情報を基に分析することで説得力ある判断材料にしたい」(安全推進本部安全調査・研究グループの木村文男部長)と意気込む。将来的には、飛行中の機体から情報を収集して、リアルタイムで分析できる体制を目指す。

 危険因子を洗い出して、事故になり得る可能性との因果関係を整理することは安全や人命を預かる他業界でも応用が利く。木村部長は、応用範囲として鉄道や医療、電力会社を挙げた。これらの企業とともに研究に取り組んで、ほかの業界でも活用できる技術の確立を目指したい考えだ。