2007年7月に運行を始めた新しい新幹線「N700系」
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 携帯電話やインターネットから東海道・山陽新幹線の指定席を予約できる「エクスプレス予約」の会員数が、近く100万人を突破することが確実になった。サービスを提供している東海旅客鉄道(JR東海)の「エクスプレス・カード」会員に、エクスプレス予約を利用できる西日本旅客鉄道(JR西日本)の「J-WESTカード」会員まで含めると、6月末時点で合計94万人を超えている。現在の会員増加ペースのままいけば、さらに6万人の上乗せは時間の問題である。

 2001年9月に開始したエクスプレス予約は、スタートから約6年で大台の100万会員を抱えるサービスに成長する。これはつまり、「100万台分の新幹線予約端末」が会員の手元で稼働している状況に等しいともいえ、駅にある窓口端末の数をはるかに超える規模になる。

 東海道新幹線の年間輸送人数は、近年は2002年度を底にして2006年度まで4期連続で右肩上がりに伸びている。この4年間はエクスプレス予約のサービス提供期間と重なるため、エクスプレス予約が新幹線の乗客の増加に多いに貢献していると考えることができる。

 JR東海は2008年3月には100億円を投じて、ICカードを駅にある新幹線専用の自動改札にかざして乗車できる「エクスプレス予約ICサービス」を開始する予定だ。通常のクレジット機能が付いたエクスプレス・カードとは別に、個人を特定できる「エクスプレスICカード」を会員に配布して、自動改札で本人と予約した座席情報を照合して入場する。自動改札にICカードをかざせば、紙の座席情報が自動改札から出てくる。東日本旅客鉄道(JR東日本)の携帯電話向け電子マネー「モバイルSuica」の利用者なら、モバイルSuicaとエクスプレス予約を組み合わせて、携帯電話で自動改札を通過することもできるようになる。

 これまでは予約した指定席の切符を駅の専用端末などで発券する手間がかかったが、そうした時間まで省くICサービスの導入で、会員の利便性をより一層高める。これにより、JR東海は会員数を一気に倍増させる計画を持っている。「2008年春のICサービス開始から2年で、現状の約2倍である180万会員の獲得を狙う。エクスプレス予約は、これから数年で大きな山場を迎える」(糸永俊夫・営業本部エクスプレス予約開発グループリーダー)

新幹線車内の5人に1人はエクスプレス予約会員

 予約した指定席を携帯電話から何度でも無料で変更できるエクスプレス予約は、東名阪を頻繁に行き来するビジネスパーソンに特に好評なサービスだ。ビジネスパーソンが行動する「平日」には、1日に約6万4000人もの人がエクスプレス予約を利用している。この数は1日の新幹線乗客の20%近くに達するものだ。単純に考えれば、東海道新幹線の車内を見渡すと、乗客の5人に1人(5人並びの新幹線座席の1人)はエクスプレス予約で切符を買った顧客だということになる。

 もっといえば、この5人に1人は携帯電話から指定席を予約して専用端末で切符を受け取ったわけで、窓口に並ばなかったことになる。つまり、それだけの人数分の「窓口の待ち行列」がなくなり、結果的にほかの顧客の待ち時間が短くなっていると考えることができる。

 ビジネスパーソンの利用が多いエクスプレス予約には、顕著な特徴が見られる。「乗車直前」に予約を入れてくる人が多いことだ。特に月曜日や金曜日といったビジネスパーソンが最も移動する可能性が高い日は、「当日」のエクスプレス予約が殺到する。

 彼らは皆、急いでいるので、携帯電話からの予約のレスポンスは素早く返さなければならない。必然的に、エクスプレス予約のシステムは、「会員の利用のピーク時を想定して、システム構成を考えなければならない」(齋藤隆秀・営業本部エクスプレス予約開発グループ副長)。ピークに合わせてシステムを構成すればオーバースペックになりがちだが、「乗車直前に予約する人は待ってくれないので、そのニーズに応えるにはピークに合わせてシステムを構築せざるを得ない」(齋藤副長)。

 JR東海はエクスプレス予約専用の大型汎用機(メインフレーム)を用意しており、そのフロントエンドにサーバーを数十台並べて、一時に集中する予約の申し込み・変更に対処している。一方で、会員が利用する予約画面は限りなくシンプルに作り込み、予約にかかるトランザクションの負荷を少しでも減らす工夫を凝らしている。