NECモバイリングが運営するSNSサイト「Colorful*CAFECLIP」の画面
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 NECモバイリングは、運営するSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)サイト「Colorful*CAFECLIP」のコンテンツ強化に「ペルソナ」と呼ばれる架空の顧客像を用いている。同サイトは昨年11月に開設。色をテーマにしており、現在およそ3000人が参加している。「カラー占い」「色彩検定対策」といったコンテンツを無料で提供しており、参加者の大半が色に関心がある20代の女性である。

 サイト強化に用いたペルソナと呼ばれる手法は、まず定量的なデータに基づいて重要な顧客セグメントを割り出す。次にそのセグメントの中で象徴的な顧客数人に対してインタビューを実施する。マーケティングや商品開発の担当者は、インタビューの中に出てくる顧客の体験やこだわりを拾い集めて、それらを再構築して架空の人物像「ペルソナ」を設定する。そのペルソナには名前や年齢、経歴やエピソードまでが細かく決められて、担当者らがイメージしやすいようにと別人の写真も用意する。

 商品開発やマーケティングの担当者はプロジェクトチームで仕事をすることが多いものの、「20代前半の女性、都内在住、会社員」といった基本的な属性を与えられるだけでは、チームの各メンバーの中に浮かべるターゲット像にずれが出てくる可能性がある。こうしたずれをなくし、チームにおける顧客像を統一するのがペルソナだ。

 NECモバイリングの場合は、定量的なデータを収集したわけではなく、Colorful*CAFECLIPの登録者の属性やアクセス記録からターゲットにすべき層を絞り込み、日記などの書き込みを読むなどして人物像を肉付けした。こうして生まれた「佐々木貴子」「北村由梨」という2人のペルソナは「LOOK!LOOK!」という4月に始まった、月に1度の連載コンテンツの企画に使っている。

「佐々木貴子」は23歳の銀行員。最寄り駅や身長、血液型、家族構成はもちろん「女の先輩ともそこそこうまくやっていけるが、印象が薄く上司にはなかなか覚えてもらえなかった」といった細かな物語までがペルソナのプロフィルに盛り込まれている。北村由梨に関しても同様だ。連載では横浜デジタルアーツ専門学校の生徒が毎月与えられたテーマに沿って取材したものが紹介されている。生徒は2チームに分かれて、それぞれが佐々木、北村のペルソナを意識したコンテンツ作りに取り組んでいる。

 例えば、会社員である佐々木貴子は「仕事の後に気軽に夜桜を楽しみたいはず」として夜桜を見ながら食事ができるレストランを紹介するといった具合だ。販売事業本部ソリューション開発部の坪郷博一氏は、ペルソナについて「担当者間の意識統一を図りやすい。顧客の像を絞り込むことでリスクも生じるかと思ったが、絞り込むことで企画も深いものになる」と手応えを感じている。NECモバイリングでは今後、ペルソナという手法を同サイトのほかのコンテンツや、今後開発するSNSサイトでの利用も視野に入れているという。