大阪ガス ガス製造・発電事業部の上田 和彦・事業推進部長兼技術・保安統括理事

 大阪ガスのガス製造・発電事業部でスタートさせた業務改善活動「スーパーシックスシグマOGウェイ」が、4年を経過した現在も活発に取り組まれている。

 この活動の年間改善目標額は90億円。2007年3月期の達成額は約100億円だった。これで初年度から4年連続で100億円を突破した。「製造所の現場で働く従業員一人ひとりに業務をつきつめる意識が浸透した」とガス製造・発電事業部の上田和彦・事業推進部長兼技術・保安統括理事は語る。

 日々の業務の進め方を改善していくこの手の活動は、一般に、開始当初は課題が容易に見つかるので活動が盛り上がるものの、時間とともに停滞してしまうことが少なくない。大阪ガスのガス製造・発電事業部では、活動を形骸化させない仕組み作りに工夫を凝らしている。その結果、例えば初年度は7万5000件の改善があり、2年目も7万7000件だった。

 約300人から成るガス製造・発電事業部は、社員1人当たりの年間の業務改善目標を3000万円に設定している。事業部全体の年度目標は90億円となる。同部門全体で常に知恵を絞ってきている大きな業務課題は、ガスの製造コスト低減と安定供給、保安の確保である。スーパーシックスシグマOGウェイは、この永続的な大命題に積極的に対処していくための手段である。


大阪ガス 泉北製造所の渡部 安重・副所長兼第一工場長

 実はスーパーシックスシグマOGウェイによる業務改善金額には、製造コストを実際に削減できた金額だけでなく、停電や事故などといった製造所が抱える潜在的なリスクを低減させた金額を含む。その中には新たに考案したリスク低減策もあれば、日々の業務を確実に遂行することによってリスクを抑えたという取り組みも入る。そこで、大阪ガスではこの業務改善金額を「体質強化貢献額」と呼んでいる。「製造所が強くなる活動すべてを評価している」と大阪ガス泉北製造所の渡部安重・副所長兼第一工場長は言う。

 このため業務改善の一例としては、定期パトロールで普段見つけられなかった不具合に気づいたというものもあれば、新人が停電発生時の対処方法について2カ月でマスターすると上司に宣言してそれを実現したという取り組みも業務改善の1つと数えて金額換算する。

従業員の「攻め」の意識を醸成

 スーパーシックスシグマOGウェイを始めた大きな狙いは、リスク低減だけではない。製造所に勤務する従業員の意識改革も狙ってきた。

 以前は、製造所の従業員はどうしても「事故は絶対に起こさない」「トラブルが起こったらどうしよう」という受け身の意識が先行しがちで、会社にどれだけの利益をもたらそうかという攻めの意識でいるのが難しかった。これでは現場が嬉々として仕事に取り組んで様々な改善提案を自発的にしてくる状態にしづらいし、優秀な個人が組織に埋もれる可能性も高い。そこで、頑張れば日々の仕事すべてをプラスに評価する仕組みとして、スーパーシックスシグマOGウェイを考案した。

 スーパーシックスシグマOGウェイは、米ゼネラル・エレクトリックが1990年代後半に全社的に採用して有名になった業務改善・経営改革手法「シックスシグマ」にヒントを得ている。社員を「ブラックベルト」「グリーンベルト」「現場の社員」という役割に分担しておき、経営幹部が提示した大きな業務課題をブラックベルトが具体化して小分けし、グリーンベルトが率いる各現場が小分けされた課題解決に取り組む――という点がシックスシグマに似ている。 

 スーパーシックスシグマOGウェイを形がい化させない工夫として、大阪ガスではブラックベルトが年度ごとに大きな業務改善目標を複数提示し続けている。例えば、「つきつめる実戦訓練」「スーパー試運転」「スーパーメンテナンス」「究極アラートの選択と集中」「設備のシンプル化」などといったテーマを掲げてきた。「大きな改善の方向性を定期的に示すことが、活動を常に活性化させておく秘訣」と上田理事は説明する。