WOWOWは2008年度上期中をメドに、新しい顧客管理システムを稼働させることを明らかにした。同社は2006年5月に、2006年度から2008年度までの新しい3カ年計画「新WOWOW創造3ヵ年計画」を発表しており、新しい顧客管理システムはその計画を達成するための情報基盤に位置づけられる。

 当初WOWOWは3カ年計画の中で、「2006年度中(2007年3月末まで)に新しい顧客管理システムを稼働させる予定」としていた。だが、その半年後の2006年11月に発表した2007年3月期中間決算では、7億3500万円の特別損失を計上し、既に構築に着手していた新しい顧客管理システムの開発中止を決定した。WOWOWによれば、ソフトウエアの開発を委託したシステム構築会社の納期遅延が開発中止の主たる原因だという。

 その後、WOWOWは半年かけてシステム開発要件の見直しやシステム構築会社の再選定を進め、2007年度が始まったこの4月に改めて、顧客管理システムの開発プロジェクトを再スタートさせた。その時、システムの完成予定時期が2008年上期に設定された。

 2006年秋に中止した最初の開発プロジェクトでは、基幹系システムの一部として新しい顧客管理システムを開発し、有料放送加入者の番組の好みや家族構成、ショッピング履歴などを分析。有料放送以外の会員ビジネスを拡大するための機能やインターネットによる各種サービスを提供できるようにする予定でいた。だが、この半年の見直しでは、それらの機能を「基幹系」に取り込むのはやめ、別システムで作ることを決定した。

 刷新・統合することにしたのは、「加入者から徴収するテレビ番組の視聴料金とそれに対する視聴許可の管理システムと、コールセンターでの問い合わせなどの顧客対応システムの2つに絞り込んだ」(大塚治夫・経営戦略局システム部長)。つまり、同社にとっては、この2つこそが基幹系と呼ぶべき顧客管理システムだと再確認されたわけである。WOWOWは2007年度に、13億円のIT(情報技術)投資を計画している。

 3カ年計画の当初の発表内容から考えれば、WOWOWは新しい顧客管理システムの稼働が約1年半遅れることになったわけだが、「3カ年計画の基本目標に変更はない」(中部充一・経営戦略局長)としている。目標数値は、2008年度末までに加入者数が280万人、売上高が800億円、経常利益率が6.0%である。3カ年計画の1年目である2006年度が終わった時点で加入者数は約243万人、売上高が約662億円、経常利益率が約6.2%。放送サービスからの視聴者離れが叫ばれるなかで、前期の1年間に約5万人の加入者が増えただけに、3カ年計画の1年目としては「ほぼ思惑通りの加入者の伸びを達成した」(中部局長)。ひとまずは、システム開発中止の影響は見られない。

 ただし、楽観視はできない。2006年度には、BS放送以外の新しい伝送路の開拓が計画ほど進んでいない事実も明らかになり、さらなる加入者増や売り上げ増に向けて課題が見えてきた。そんな時だからこそ、2008年上期に稼働する新しい顧客管理システムを使った、既存加入者の固定化やサービスレベルの向上が不可欠になってくる。