オートバックス店内にある買い取り事業「C@RS」の売り場
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 自動車用品チェーンのオートバックスセブンは、2008年度中をメドに、中古車鑑定システム「スゴ買い」を全店(約500店)に導入する。

 同社は中古車買い取り事業「C@RS(カーズ)」を強化しており、実施店舗を年々増やしている。2006年は約360店舗で1万5000台を買い取ったが、2008年には500店舗で3万台まで引き上げたい考えだ。

 中古車買い取り事業は、来客を促すことが課題といわれてきた。同社は自動車用品店であり、自動車で来店していることが多い。リフトなど車両を検査する設備もそろっていることから、本業との親和性が高いと判断し、買い取り事業を強化している。

 中古車の買い取りで最も重要なのは、事故車を見抜くことだ。買い取り担当者が一人前になるには、最低でも5年はかかるといわれている。1台ごとに状態が異なる車両を査定する技能は、経験と勘に頼らざるを得ない。そこで、新システム「スゴ買い」を活用することで、査定精度を向上させることにした。買い取り担当者は、5日間の研修を受ければ、5年分の経験をカバーできるようになるという。

 同社の買い取りプロセスは、店頭に持ち込まれた車両を査定担当者が車両状態を確認し、その情報を本部へ送信。本部が店頭で査定した情報をもとに、市場価格を参考にして買い取り価格を決定する。新システム「スゴ買い」が査定担当者の業務を支援し、経験不足を補う。

 同社は買い取り専業ではないため、兼任で担当している。経験が浅く未熟な担当者が事故車を買い取ってしまうと、中古車オークションに出品した際に事故車と判断されてしまえば値段は安くなり、損失となってしまう。そこで、ベテラン査定員の監修のもと、誰でも事故車を見抜けるようなソフトウエアを開発した。総投資額はハードウエアを含めて十数億円とみられる。

見えづらい修復歴も分かる


榧宏介・C@RS事業推進部長。手にするのが新システムの端末
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 新システムの案内に従って査定していけば、査定額に影響する項目をすべて洗い出せるようになっている。新システムに車検証に記載されている形式番号を入力。本社のデータベースと照合して、該当する車種に装着されている可能性があるものが一覧で表示する。ナビゲーションシステムやサンルーフといった装備品の有無によって、大きく査定額が異なるからだ。

 もう1つ、査定額に影響を及ぼすのが、修復歴の有無である。中古車は新車と違って、1台ごとに状態が異なる。「ベテラン査定員は、ねじを回した形跡があるかなど、車両を見ながら修復歴の見当をつけていく」(榧宏介・C@RS事業推進部長)というように経験がものをいう。

 新システムには、膜圧計と呼ばれる検査器を導入した。膜圧計で塗装の厚みを測定することで、修復歴の可能性を探る。担当者は、システムのガイダンスに従って、ドアやボンネットなど指定された個所を測定していく。これらの数値結果とあらかじめシステムに蓄積している修復歴の無い状態の数値と照合し、事故を起こしている個所がないかを見抜く。ベテラン担当者が経験と勘で行っている作業を、数値を頼りにしながら、修復の見当をつけていくわけだ。

 さらに、店舗で査定した情報を、ベテラン査定担当者を集めた検査監視センターに送ってチェックする。「ハンドルが良好とあるのに、関係するほかの項目が異常」といった矛盾を探し、再検査させる。

 こうしたやりとりをした後に、本部が査定額を決定し、早ければ5分以内に店舗へ回答する。

 システム化することで、査定に関する課題も見えてくる。買い取り価格とオークションに出品した際の価格に差異が生じれば、課題があることが分かる。この課題を確認してシステムに反映していくことで、査定精度を上げていくことができる。