「東京ミッドタウン」を運営する東京ミッドタウンマネジメントは,携帯型の専用情報端末を用いて施設内のアート作品などを紹介する自動ガイドサービスを6月13日から開始した。システムは,東京都主催の「東京ユビキタス計画」において実証実験が行われてきた「ユビキタス技術」を応用し,YRPユビキタス・ネットワーキング研究所とともに開発した。ユビキタス技術を採用した初めての本格的な商用サービス事例である。
図1●写真1●東京ミッドタウンの「ユビキタス・アートツアー」 [画像のクリックで拡大表示] |
また「ジャパン・バリュー」というコンセプトに基づき,多様な日本文化や才能を発信する場でもある。東京ミッドタウン内には,来訪者の感性を触発するような29作品の現代アートや建築物が点在する。そして6月13日に,これらの作品について,専用情報端末を用いて紹介する自動ガイドサービス「ユビキタス・アートツアー」が始まった(写真1)。
ユビキタス・アートツアーは,赤外線通信と無線LAN機能を備えた「ユビキタス・コミュニケータ」と呼ばれる専用情報端末と,位置やその他の情報を特定するユニークなID番号「uコード」を格納し,赤外線または無線LANを介してユビキタス・コミュニケーターへ情報を発信する「uコードマーカ」とで構成される。
ユビキタス・コミュニケータは,東京ミッドタウン内の約500カ所に設置してあるuコードマーカからuコードのID情報を取得。認識したID番号を元に,端末内に収録したアート作品を紹介する画面や映像,音声などを自動的に再生するほか,現在位置を判断した上でツアーコースの経路を案内する。
ユビキタス・コミュニケータが道案内や作品紹介
システム構築は,東京ミッドタウンマネジメントが,東京大学の坂村健教授が所長を務めるYRPユビキタス・ネットワーキング研究所と共同開発によって実現。初めてユビキタス技術を商用化するに至った。
写真2●アートツアーでは紙の地図やガイドとユビキタス・コミュニケータが貸し出される [画像のクリックで拡大表示] |
ユビキタス・アートツアーでは,来訪者にユビキタス・コミュニケータを貸し出して,利用者自身が操作しながらアートを鑑賞していく(写真2)。端末はタッチパネル式のディスプレイを採用しており,利用者は付属するスタイラスペンを使って操作できる。メニュー画面から好みのツアーコースを選択することで,ユビキタス・コミュニケータによる経路案内が開始する。
アートツアーは,全7コース用意されている。「120分フルコース」や「30分ハイライトコース」「建築デザインコース」「雨の日コース」など,目的や天候に合わせて利用者が自由に選択できる(写真3)。ユビキタス・コミュニケータは,地図や現在地の画像,音声を使って,利用者にツアーコースを案内する(写真4)。
写真3●アートツアーのコースを画面から選択 [画像のクリックで拡大表示] |
写真4●現在地のイラストを使ってコースをナビゲート [画像のクリックで拡大表示] |
ユビキタス・コミュニケータの誘導に従ってコースをめぐり,利用者が各アート作品や建築物のそばに到着すると,自動的に該当する作品の紹介情報が再生される(写真5)。紹介情報には音声や写真,テキストがあるほか,ビデオ映像では作品を製作する様子や作家インタビューなどが閲覧できる(写真6)。
コースに組み込まれた作品スポットは途中で飛ばしたり,作品リストを一覧表示させて特定の作品のコンテンツを視聴することも可能である。
「利用者は人的なガイドを伴わずに,自分のペースで自由に作品をめぐることができる。端末を手にして移動するだけで自動的に適切な情報を取得できるため,難しい操作の必要がなく,誰でも簡単に利用できるメリットがある」(吉田氏)。
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写真5●アート作品の前では作品の解説を自動的に表示 [画像のクリックで拡大表示] |
写真6●作者へのインタビューなどのビデオによる作品解説も選べる [画像のクリックで拡大表示] |