商談の窓口となる同社ホームページ
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 ねじの専門商社であるツルガ(大阪府東大阪市)は、今年1月に営業支援システムのSaaS(Software as a Service)を導入。現在、この導入成果が出始めている。受注業務が効率化したことに加え、システムを活用した仮説検証によって販路が拡大し始めているのだ。同社が導入したのは、セールスフォース・ドットコムの「Salesforce Enterprise Edition」。

 同社はウェブ・サイト経由での受注を主力とした商社。同社の営業手法は、短納期を希望する見込み客に対して、必要なねじの詳細を聞き出して受注につなげることである。ねじに関する相談をメールや電話で受け付け、24時間以内に回答するサービスを無料で提供している。サイズや用途を聞き出し、合致する対応商品を持つ専門メーカーから探して受注となる。専門メーカーからの納期も短くなってきたため、大量の在庫を持って顧客に小分けする旧来の問屋業から、顧客からの受注を受けてから商品を確保する業態への転換を目指している。

 だが、年間相談件数が4500件を営業担当者とパート社員の6人で切り盛りしているために、対応の漏れがあることもあった。営業支援のSaaSを導入したことによって、担当者が明確になるとともに顧客ごとの進ちょく状況を可視化できた。さらに、顧客からの過去の相談情報を基に新しい需要を掘り起こすための分析ができるようになった。この結果、売上高が毎月20%ずつ増加している。

 顧客ごとの進ちょくが可視化できたことで、業務効率が図れた。SaaS導入後は、顧客ごとの提案内容を全員で共有できるため、対応漏れを防いだり提案方法をアドバイスするいったことができる。また、パート社員が急に休んだ際の対応にも役立つ。パート社員には乳幼児を持つ主婦が多く、発熱など子供の急病のために休むこともある。新システムに提案内容といった状況がつかめるため、容易に引き継げる。「急に休んでも業務が滞らない環境を作ることで優秀なパート社員の確保につながっている」(敦賀伸吾社長)という。

 さらに、データベースに蓄積した相談履歴が、見込み客リスト作りに役立っている。この典型的な事例が、ボルトナットの保護カバー「TSキャップ」だ。

 TSキャップは、高速道路などで使用するボルトにかぶせるカバーで、水などの浸入を防ぐもの。主な購入顧客は建設業で、防錆用途に使われていた。敦賀社長はほかの用途をみつけて販路を広げられないか考えていた。目をつけたのが、けが防止としての用途だ。当時、小学校や公園などに設置している遊具で子供がケガをしてしまうケースが目立っていた。「ほかにつまづきそうな所がないかといろいろと考えた」(敦賀社長)結果、小学校などに設置が進んでいるエアコンの室外機に的を絞った。ボルトがむき出しになっていることが多く、TSキャップをかぶせれば事故を防げると考えた。

 そこで、この仮説を検証するため、過去の相談履歴を検索した。「幼稚園」「安全用途」「けが防止」といった関連のありそうなキーワードで検索したところ、実際にそのような相談があることが分かった。しかし、商談には結びついていなかった。そこで、学校へ販促し、商品の認知向上を強化することにした。この結果、昨年は月間5万円しかなかった「けが防止用途」が、月間300万円と60倍に伸びた。