日本で初めて全国規模の棚卸し代行サービスを始めた。これまではコンビニエンスストアの出店ラッシュなどに乗って急成長。最近ではさらに多様な小売りチェーン店を開拓し、9期連続で増収増益。小売りチェーンの売上高上位100社のうち約7割から業務を請け負う。強さの秘けつは、作業精度を高め、効率的な人員配置を促すIT戦略だ。

 様々な商品が競うように棚を埋め尽くすコンビニエンスストアやスーパーマーケット。これら日用品や食品を扱う小売りチェーンは、年中無休で早朝から深夜まで長時間営業をしている店舗が多い。いったい店頭の棚卸しはいつ実施しているのか。膨大な手間がかかることは想像に難くない。

 エイジスはここにいち早くビジネスチャンスを見いだした。1978年創業の同社は、小売店向けの棚卸しアウトソーシングサービス最大手。国内の年間売上高上位100社の小売りチェーンのうち、実に約70社がエイジスに棚卸し業務を委託している。セブン-イレブン・ジャパン、ローソン、イオン、マツモトキヨシ、ライトオンなど小売業界のそうそうたる面々が、取引先リストに名を連ねる。

 2007年3月期決算で9期連続の増収増益を記録。斎藤昭生社長は、「チェーンストア業界の生産性向上に寄与していきたい」と意気込む。

●エイジスの概要と業績推移
●エイジスの概要と業績推移

疾風のように現れて疾風のように去っていく

 エイジスのスタッフは数人~数十人で1チームを組み、小売店を深夜に訪問して、店頭にある商品をすべてカウントし終えて明け方に立ち去る。ベテランスタッフが商品をカウントする様子は、職人芸の領域に達する。「例えば、商品の山をぱっと見て一気に10個ずつ数えていくブロックカウント技術を持つ者がたくさんいる」と、経営企画室の小島輔・業績管理担当が説明する。

 エイジスの棚卸しを大別すると、「単品棚卸しサービス」と「金額棚卸しサービス」がある。前者は商品に付いているバーコードを一つひとつスキャンするもの。商品ごとの数量はもちろん、在庫年齢など多様な棚卸しデータを取得する。一方の後者は、売価と数量で棚卸しをし、商品別や陳列場所(什器)別の在庫金額を確定する。

 どちらのサービスにしても、棚卸し作業の基本的な流れは変わらない。まず閉店前に、スーパーバイザー(現場責任者)とクルー(チームメンバー)1人が店舗を訪問する。スーパーバイザーは店長などと一緒に売り場を巡回して注意事項を確認しながら、「エリアタグ」と呼ぶ作業エリア指示用の付せんを棚や什器などに張り付けていく。この間、クルーは事前に作成しておいたレイアウト図と実際の売り場との変更点を確認する。

 閉店時刻になると、ほかのクルーたちも到着。買い物客がいなくなるのを待って“朝礼”をし、エイジスの営業拠点で教えられてきた重要事項をここで再確認する。クルーはそれぞれ、棚卸し情報を入力する携帯端末、カウント終了の目印として張るタグ、カウント方法など注意事項を記載したガイドシート、脚立を持って作業を始める。

 クルーは、自分の担当作業エリアを黙々とカウントし、携帯端末に必要な数値情報を入力していく。作業が一区切りつくごとに、集計用のノートパソコンに端末を接続してデータをアップロード。ここでスーパーバイザーがパソコンに搭載した「AISシステム」を使って、カウントの精度をチェックする。実はこの携帯端末とAISシステムに、エイジス独自のノウハウと強みがある。

大型キーボードを搭載した特殊端末やスキャナー端末、ノートパソコンで、面倒な店舗棚卸しを短時間で実施
大型キーボードを搭載した特殊端末やスキャナー端末、ノートパソコンで、面倒な店舗棚卸しを短時間で実施