ケーブルテレビ加入者に、インターネット接続や固定電話サービス、デジタル放送をお勧めする「アウトバウンド」を実践する札幌のコールセンター
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 ケーブルテレビ大手のジュピターテレコム(J:COM)が、企業のほうから顧客に営業の電話をかける「アウトバウンド」で成果を上げている。

 J:COMは札幌と福岡の2カ所に、電話営業のための専用コールセンターを配備しており、合計約280人のオペレーターが同社のケーブルテレビ加入者に毎日電話をかけている。

 電話の内容は主に2つだ。1つは、顧客にインターネット接続や固定電話といった、ケーブルテレビ以外の新たなサービスをお勧めするもの。もう1つは、アナログ放送番組を見ている顧客に、より高画質なデジタル放送番組への切り替えを促すものである。

 コールセンター業界では、前者のような顧客への追加サービスの紹介を「クロスセル」、アナログからデジタルへのグレードアップといった後者のようなものを「アップセル」と呼ぶ。J:COMはクロスセルとアップセルをアウトバウンドで実施することで、確実に成約を伸ばしている。

 J:COMがアウトバウンド専門のコールセンターを開設したのは2006年2月のことだ。それから約1年が経過し、今ではオペレーター1人当たりの月間契約獲得数(クロスセルの実績)が、平均で30件に達した。同じく、デジタル放送へのアップセルでは、月間100件以上の契約変更を獲得するオペレーターが続出している。

 追加サービスの獲得や、約1000円の料金アップにつながるデジタル放送への切り替え促進は、2006年12月期におけるJ:COMの2ケタの増収増益に直接貢献した。今やアウトバウンドは、J:COMの営業力の大きな源泉になっている。

 それでいて、アウトバウンドのオペレーターのコストは、コールセンターの運営費やシステム構築費まで含めても、営業担当者が顧客の自宅を回る訪問営業のコストよりも安い。J:COMは、アウトバウンドのコールセンターが稼働2年目になる2007年は、さらにコスト効率が高まると見ている。

 J:COMの場合、アウトバウンドとはいっても、全く新規の顧客に営業電話をかけるわけではないので、「アウトバウンドのハードルが低かった。すぐに電話を切られることもあったが、逆に喜んでもらえる件数のほうが多かった」(寅田修・テレセールス推進部J:COMお客様コンタクトセンター長)という。

 J:COMは今、年間20万~30万件ペースを目標に、アナログ放送を見ている顧客をデジタル放送に切り替えようとしている。そのうちの年間約10万件分をアウトバウンドで獲得していく計画だ。それにはオペレーター1人当たりで、月間100件以上の成約を獲得するのが必須条件になるが、既にそれが可能な水準になりつつあるとしている。

 実はJ:COMにおいて、顧客のほうから同社に問い合わせの電話をかけてきてくれる割合は、全体の15%に過ぎない。残り85%の顧客とは契約後に話をする機会がほとんどなく、「顧客が日ごろ感じているご不満やご要望、疑問を集め切れていなかった」(寅田センター長)。そこで、この85%の顧客にアウトバウンドであえて切り込み、顧客との電話での会話から潜在ニーズを引き出して、成約に結びつけた。