日本マクドナルドは、2008年末までの3年で、システムを全面的に刷新する。まず全国3800店のPOS(販売時点情報管理)端末をリプレース。さらに本部の業務プロセスを見直して、基幹系システムを再構築する。接客の効率や本部の意思決定速度を高める。

 日本マクドナルドは年末から、店舗に配置した2万台の専用POS端末をWindows XP搭載のパソコンPOS端末に順次リプレースする。現在、店舗システムの要求仕様固めやパソコンPOSの機種、開発委託先の選定を進めている。2006 年末から導入を始め、2008年末までに全国3800カ所ある店舗への展開を終える計画だ(図)

図 日本マクドナルドは今後3年間で、店舗POS端末や基幹系システムを全面的に見直す
図 日本マクドナルドは今後3年間で、店舗POS端末や基幹系システムを全面的に見直す

 同社が大規模なハードウエア・リプレースを進める目的は、店舗オペレーションの効率化である。現行のシステムではメニューや価格の改定があると、店舗マネジャがPOSレジの設定を変更する必要がある。「パソコンPOS導入を機に、メニューの追加・変更や料金改定に伴う店舗マネジャのシステム変更作業をゼロにし、本業に専念できるようにする」(日本マクドナルドの前田信一執行役員情報システム本部長)。

 さらに端末の操作性を向上させることで、接客の効率を高める。「現行機でもタッチパネル方式を利用するなど工夫はしているが、まだ改善の余地はある。1 人当たりの接客時間を10秒程度短縮できるような操作方法を取り入れる」(前田執行役員)。

 マクドナルドはPOS端末更新プロジェクトと並行して、今年からバックオフィスのシステム再構築に着手した。「本部の業務プロセスを見直してこなかったせいで、業務のいたるところにムダがある。すべてのプロセスの最適化を図り、それを反映したシステムを作ることで、本部の意思決定スピードを高める」。日本マクドナルドの原田泳幸会長兼社長兼CEOは、こう基幹系システム再構築の理由をこう語る。

 10年ぶりとなる基幹系システムの再構築は今年から、EA(エンタープライズ・アーキテクチャ)の概念に基づいて進めている。「申請手続きの決裁者を原則1人にするなど、できる限り簡素化する。その一方、不正行為のリスクがある業務については、内部統制を意識して、承認ルールを厳格にするなどメリハリをつけて、業務フローを設計する」(前田執行役員)。

 新システムの開発作業は、今秋にスタートする予定だ。会計や人事・給与といったシステムの再構築を優先し、資材・購買、店舗開発、フランチャイズ契約管理などのシステムを作り直す。2008年内には基幹系システムの全面刷新を終える計画。システム開発については、「可能な限り市販のパッケージ・ソフトや、米マクドナルドのシステムを取り入れる」(前田執行役員)方針だ。システム開発の委託先は「まだ決めていない」(同)。

 日本マクドナルドは今年から2008年末までの3年間で、情報化に数百億円を投じるもよう。2005年12月期の連結経常利益28億5900万円の同社にとって、決して小さくない金額。原田CEOは「店舗と本部の業務スピードを上げ、それにより顧客サービスの質を高める。そのために必要な戦略投資だ」と断言する。新システムに移行すれば、システム運用費を現在の60%程度まで削減できると見込んでいる。