写真 新銀行の発足を翌日に控えた2005年12月31日の三菱東京UFJ 銀行(当時は東京三菱銀行)本店
写真 新銀行の発足を翌日に控えた2005年12月31日の三菱東京UFJ 銀行(当時は東京三菱銀行)本店
(写真撮影:山西英二)

 三菱東京UFJ銀行でCIO(最高情報責任者)を務める原沢隆三郎常務事務・システム部門長は1月26日、本誌の取材に応じた。今年1月のシステム統合は、月末のバッチ処理が残っているが成功は見えたという。気を緩めず、より難易度の高い完全統合に挑むとした。

 「800億円を投じた、3万人月を超えるプロジェクトを1年で完了できたと思う。開発規模は見積もりの範囲に収まったし、開発費用は予算を下回っている」。三菱東京UFJ銀行の原沢隆三郎常務事務・システム部門長は、1月末をメドに進めてきた「Day1」と呼ばれるシステム統合プロジェクトをこう総括する。

 Day1においては、旧東京三菱銀行と旧UFJ銀行の勘定系システムを相互接続した。2005年末から2006年初めにかけて、休業日に切り替え作業を進め、1月4日午前7時から相互接続をスタートさせた。1月27日前後にピークを迎える口座振替や月末精算といったバッチ処理を終えられれば、Day1 フェーズは完了する。

 Day1の総開発費800億円のうち、3万人月を超えるソフト開発作業に投じた費用は「300億円強」(原沢常務)。1年間でこれだけの開発をこなすには、単純計算で常時2500人の開発要員が必要になる。ただし、三菱東京UFJ銀行は合計6000人の開発要員を抱えている。大まかな内訳は、1000人が銀行のシステム部員、1000人がシステム子会社の開発要員、残る4000人がITベンダーのエンジニアである。1年間にこなせる開発規模は8万人月に達する。このためDay1の開発と並行して、法制度の改正対応やセキュリティの強化など、Day1とは別の開発を5万人月分こなすことができた。

 年末年始の切り替えは順調であった。12月30日の午前10時から「150時間作戦」と銘打って切り替え作業を始め、「12月31日までにシステム移行をすませ、1月1日と2日ですべての確認テストを終えた。営業初日の前日である1月3日は、一部の要員を除いて、ほとんどが休みを取れた」(原沢常務)。

 3万人月という開発規模や1年という開発期間を考えると、トラブルは皆無ではなかったものの、Day1プロジェクト全体は成功であったと言えるだろう。ただ、開発担当者は休む間もなく、勘定系システムの完全統合に向けた「Day2」のプロジェクトの準備を進めている。

 Day2では、2007年12月をメドに旧東京三菱銀行の勘定系システムへ一本化する予定だった。だが、本誌の調べによれば、金融庁からシステム相互接続のテスト不足を指摘され、Day1の切り替えを3カ月延期した影響で、Day2の終了時期を2008年12月まで、1年延期する見込みだ。Day2の開発金額は当初1000億円弱と見積もっていたが、さらに膨らむ可能性が大きい。

 原沢常務は「顧客満足度、開発費用、開発期間、優先順位といった諸要素を勘案し、Day2の具体的な開発内容をまとめつつある段階であり、Day2の計画は正式決定していない。このため、現時点でDay2についてコメントできない」としている。

 「3月から4月にかけてプロジェクト計画を詰め、6月ごろに最終的な開発規模と開発金額、完了時期を確定する」(原沢常務)。これに先立って同行は2月中旬、金融庁に「経営健全化計画」を提出し、その中でDay2の開発規模と完了時期について触れると見られている。