総合商社大手の伊藤忠商事が繊維や機械、食品など7つのディビジョンカンパニーごとの縦割り体制を打破しようと改革に取り組んでいる。この代表例が、横田昭副社長をトップとする「横断案件推進委員会」だ。2001年に設立された前身の「グループリーテイル戦略委員会」が昨年の名称変更とともに、より幅広い案件を扱うようになった。同社では近年、オリエントコーポレーションやユニーなど単独のカンパニーの仕事では収まり切らない案件が持ち上がってきていた。横断案件推進委員会には7つのタスクフォースが存在する。タスクフォースでの議論からライフケア推進部という新部署も誕生した。

 横断案件推進委員会のように企業の支援といった大型案件ではなく、各社員が売り先を探している案件情報をやり取りする仕組みも構築した。2003年1月から全社イントラネット上で稼働させている「i-CROSS」である。案件情報を紹介したい社員が、このサイト上に商談情報を登録する。興味を持った社員が投稿者にアクセスする。カンパニーの壁を越えて商談情報の紹介する取り組みだ。これまでi-CROSSにはおよそ40件が上り、10件が成約に至った。

 成約率を向上させるためには、同システムを社員が頻繁に見ることが大切になる。新しい案件が掲載されたときには、各支社・支店ごとに担当者に通知メールが届く。仲介した社員が所属する部署に一定額の手数料が支払われることになっている。総本社開発戦略室の小野博也室長代理は「ほっておくとポテンヒットで終わる案件を関係ある部門の協力を引き出して大ヒットにする」と話す。

 ほかにも、組織の壁を越えて各社員同士を結びつける仕組みも活用されている。「Who's Whoデータベース」と呼ばれるノウフー・データベースだ。これを活用することで、どの社員がどのような経験を持っているのかが検索できる。こうした仕組みは社員が情報を更新しないと情報が陳腐化することが珍しくない。同社では「担当業務内容」や「取扱商品/サービス」といった項目は常に最新のものがほしいという社員の要望を受けて、IT企画部が更新頻度を上げる仕組みを盛り込んだ。半年間更新がない場合と、部署異動があった場合は、トップページに更新を促すコメントが表れる。