住友林業で顧客対応をするコールセンター
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アフターサービスのために、家を建てた顧客を回る巡回車
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 ハウスメーカーの住友林業が、大手住宅設備メーカー2社とアフターサービスの体制作りで協業を始めた。2006年秋から2007年春にかけて、2社のアフターサービスシステムと住友林業の同様のシステムをインターネットで結び、顧客のフォロー情報を共有している。

 全国63カ所にある住友林業の支店内に設けられた「お客様センター」(支店のアフターサービス部門)が、家を建てた顧客から住宅設備の補修依頼を受け付けた場合、その情報を即座に相互接続した住宅設備メーカー2社に送り、速やかに補修作業を実施してもらう。その進ちょく状況と結果を住友林業もシステムを介して把握する。

 暖房器具や湯沸かし器など住宅設備の不具合が大きな社会問題になるなかで、アフターサービスに住宅販売の力点を置く住友林業は、住宅設備メーカー各社に顧客のフォロー情報の共有を呼びかけた。その結果、まず大手2社が賛同を表明。アフターサービスシステム同士のネットワーク接続が業界で初めて実現した。

 住宅設備メーカーが住友林業の呼びかけに応じるには前提として、その企業が顧客単位に管理されたアフターサービスシステムを保有していることが条件になる。2社がすぐに手を挙げられたのも、そうしたシステムインフラが既に整っていたからだ。

 住友林業自身、ハウスメーカーとしては業界に先駆けて、2000年にアフターサービスシステム「CROSS(カスタマー・リレーションシップ・オンライン・サポート・システム)」を稼働させている。これにより、全国のどの支店が、合計約20万軒ある既存顧客から問い合わせの電話を受けても、瞬時に顧客1軒1軒の住宅設計図や設備内容をCROSSから引き出して、24時間365日体制でサポートに当たれるようになった。

 数千万円のお金を支払って家を建てた顧客にとっては、ハウスメーカーによる迅速なアフターサービスの提供は当たり前のものだろうが、2000年当時は顧客全軒の詳細な情報をシステムで管理できているハウスメーカーはほとんどなく、紙での管理が一般的だった。そのため、すぐに顧客情報を引き出せなかったり、拠点間での情報共有に時間がかかり、対応が遅くなりがちだった。

 住友林業が2000年に他社に先駆けてシステムを構築した2~3年後には、業界内にCROSSと同様のシステムが一気に広がったが、先行した住友林業は「今やCROSSは当社の必須の武器になっている」(住宅本部品質保証部の新井豊チームマネージャー)という。日常的にCROSSを使い込んでいるからこそ、住宅設備メーカーにまでシステムの相互接続の話を自ら持ちかけられた。

 全支店にあるお客様センターの担当者は毎日出社すると、朝一番でCROSSを立ち上げ、夜間に一括窓口のコールセンターに入った顧客からの「受け付け履歴」を確認するのが日課になっている。そこには、その日に顧客対応すべき「アクションリスト」が表示されており、具体的にどんなアクションを起こし、最終的に結果がどうなったのかまで入力しないと、いつまでもCROSSの画面に表示が残って、「未完了リスト」として目に付くようになっている。ここまですることで、顧客サポートの進ちょく管理を徹底しながら、結果管理としてのコンタクト履歴を必ずCROSSに残すことを社内ルールにしている。

 さらに、ここ1~2年は、アクションリストの中に、家を建ててから一定年数が経過した顧客への定期メンテナンスのお知らせ通知といった、住友林業からの情報発信リストも表示できるようにCROSSの改良を続けている。新井チームマネージャーは「これまでCROSSは、顧客の家で何か不具合が起きた時の『事後対応』を速やかに実施するために活用してきた。だが今後はトラブルが起きる前の『予防・保全』にこそ、CROSSを生かしていきたい。そのための情報発信システムとしてCROSSを発展させていく」と明かす。

 新井チームマネージャーは「当たり前のようにアフターサービスを提供できていないと、いざ不具合が起きた時、ハウスメーカーとして当社を選んでくれた家族内の最終決定権者が、ほかの家族やご近所から『だから、ほかのハウスメーカーにすればよかったでしょう』と責められてしまう。最終決定権者の期待を裏切り、家族内で追い込まれないためにも、アフターサービスには投資を続けなければならない」と語る。