丸紅が今年3月、ナレッジマネジメント(KM)システムの全社展開に踏み切った。

 同社は2001年からリアルコム(東京・台東区)製の「ナレッジマーケット」を導入していたが、利用範囲は部門内での情報共有に限られていた。今回は縦割り意識が強い部門同士の連携のために利用範囲を全社に広げた。

 情報企画部の三根俊孝課長は、「情報を蓄積することが目的ではなく、人と人をつなぐことが大切。『社内出会い系サイト』を目指す」と説明する。例えば、商品やサービス、新技術の紹介、土地を売りたいという顧客の情報などが投稿され、その内容を見た社員が、投稿した本人に連絡を取るいった具合だ。「米国とアフリカに駐在する社員の間で商談が成立したという話もある」(経営企画部の米野剛文企画課長)という。

 丸紅は2006年4月に中期経営計画「“G”PLAN」を発表している。その中の6つの重要施策の1つが「横串機能の強化による総合力の発揮」だ。同社は、中計発表と同じタイミングで「社内連携委員会」を立ち上げた。関山護専務執行役員が委員長を務め、全営業部門の幹部と広報部長、経営企画部長、市場業務部長が委員として参加する、総勢20人弱の部門横断的な組織だ。

 これまでにも何度か社内連携を目的にした取り組みは行われていた。2001年には金融・物流部門といった商品にしばられない組織も作られた。環境ビジネス推進委員会や中国戦略推進委員会といった組織も続いて立ち上げられたが、現場レベルの融合はいまひとつだったという。IT(情報技術)をてこにした社内連携に期待が集まっている。