居酒屋チェーンを展開するチムニーは、2009年までに基幹システムを刷新する。投資額は15億円。今年から3年かけて、人事給与や店舗管理関連のシステムを順次刷新していく。同社が将来的に目指している1000店舗体制に向けて、競争力をつけることが狙い。目玉となるのが、POS(販売時点情報管理)など様々な情報を蓄積したデータ・ウエアハウスだ。担当者が欲しい情報をすぐに取り出せる環境を作り、素早く対策を打つことで、売り上げ増につなげたい考えだ。

 2004年に構築した既存システムは、500店舗を想定して構築していた。各店舗からウェブ経由で食材調達などのインフラを整えてきた。同社は今年3月時点で370店舗を展開し、2008年には500店舗を達成する見込み。今後も年間70~80店舗(フランチャイズ店も含む)のペースの出店を予定するなど当初の想定以上に成長しようとしている。今回の刷新によって、1000店規模となっても対応できるだけの処理能力を持てるように、サーバーも増強する計画である。

 新システムを活用するのは、エリアマネジャーやブロックマネジャーといった店長を束ねる管理者層である。これまでマネジャーがデータを分析する場合、まず必要な情報を情報システム部門に依頼してデータベースから抽出していた。もらった情報を、表計算ソフトに読み込み、自ら操作して分析しなければならなかった。仮説を考えてから検証するまでに時間がかかるため、切り口を代えて分析を繰り返すようなことはできなかった。

 しかし、マネジャーからは年々、より細かい情報で分析したいという要望が増えてきた。例えば、「フェア期間中における食事と飲み物の割合を前年対比で見たい」「客層別の店内の滞留時間を知りたい」といった具合である。多角的な分析をするには複数のシステムから数種類の情報を抽出してもらい、表計算ソフト上で合算するなど時間と手間がかかるようになってきていた。

 新たに導入するデータ・ウエアハウスにはPOS情報に加えて、人件費など経費など分析に必要な情報はそろっている。マネジャー自らがパソコンを操作して、様々な切り口で情報を引き出すことが可能だ。容易に仮説検証を繰り返すことが可能になり、従来よりも早く対応策を考えられる。

 より精ちな情報分析が必要になった背景には、外食や中食産業など業態をも越えた競争の激化が挙げられる。同社の業績は、全店でみれば2006年度も、客単価と来店客数がそれぞれ前年対比106.9%と128.3%と好調である。だが既存店でみると、客単価は2.4%増と伸びているものの、来店客数は96.5%と前年割れしている。「ITは業務支援ツール。自由に営業情報を検索できる環境を提供することで営業力を強化したい」(財経本部の浅田嘉助IT担当本部長付部長)と意気込む。新システムを活用することで来店客数が伸びる施策を考えることにつなげたい考えだ。