「ポスト・イット」などで知られる住友スリーエム(東京都世田谷区)は4月から、メンタリングプログラムを“進化”させる。2002年9月から女性社員を対象に実施していたものを、新入社員を含む全社員へ拡大する。先輩に気軽に相談して互いに学びあう風土を醸成するのが狙いだ。

 メンタリングプログラムとは、先輩社員が特定の後輩社員のメンター(指導者)に任命され、メンティ(生徒)のキャリア形成やワークライフバランスについてともに考え、自己啓発や仕事上の能力開発などについて助言する制度である。

 人財マネジメント部のアキレス美知子部長は、「親会社の米3Mではメンタリングは技術者間を中心に当たり前のように行われている。住友スリーエムの社員もこのプログラムを通じて、良き先輩やロールモデルに出会う機会を与えられ、人脈を広げながらキャリアを積める。1年間のプログラム終了後は、自分で『あの人に学びたい』と思うメンターをみつけてもらうのが理想」と考えている。

 同社のメンタリングプログラムは、これまで3期にわたって実施されてきた。第1期となる2002年9月~2003年8月は6組が対象で、6人の女性メンティのうち5人が管理職へ昇格した。2003年9月からの第2期は、全女性社員を対象に公募して34組がプログラムに取り組んだ。2005年1月からの第3期では、女性社員全員と入社5年目までの男性社員を公募の対象に加えた。

 第3期生だったコーポレートコミュニケーション部渉外広報グループの岸田祥子マネジャーは、「メンターは役員で、普段なら毎月1時間ずつ計12回も話せる機会はない。一人の人間として経験を惜しみなく話してくれた。仕事の悩みを相談すると必ず道筋やヒントをくれ、すっきりとポジティブな気分になった。儒教や歴史上の人物、格言などを巧みに利用され、理解しやすいように話してくれた。日ごろの勉強や読書の重要性を感じた。プログラム終了後の今でも見守られていると感じている」という。

 今期は、新人と2年目社員の全員をメンティとして、支店、工場、研究所などすべての事業所で計100人程度を対象に実施する。メンターは、メンティが所属する部門や同一事業分野内で推薦された入社3~7年目の社員が担当する。プログラム実施期間は4月から来年3月までとなる。

 プログラム開始に先立ち、まずはメンターを対象にしたワークショップを実施。その後はメンティとの1対1の打ち解けた雰囲気の中で、月1回1時間を最小ラインとして助言のための面談を重ねる。

 また2007年度中に、入社3年目から課長クラスまでの社員を対象としたメンタリングプログラムも開始。メンティは公募する予定である。