約1500万人の登録顧客数を抱える通販大手のセシール。これまでコンビニ,郵便局などを利用する5種類の支払い方法を顧客に提供してきたが,2007年1月より携帯電話のバーコード・リーダーを使った料金回収を始めた。

 セシールが採用したのは,日本公共料金サービスが提供する「料金・るるる」(図1)。送られてきた請求書のバーコードを顧客自身が携帯電話のカメラを使って読み取り,指定したクレジットカードや銀行口座から支払うサービスだ。

図1●セシールが採用した携帯電話によるモバイル決済の仕組み
図1●セシールが採用した携帯電話によるモバイル決済の仕組み
日本公共料金サービスが提供する「料金・るるる」を利用する。顧客は携帯電話のカメラで請求書のバーコードを読み取り,銀行やクレジットカード会社を介して料金を支払う。

写真1●セシールのマーケティング本部DBマーケティング部DBプロモーショングループの谷脇正純マネージャー
写真1●セシールのマーケティング本部DBマーケティング部DBプロモーショングループの谷脇正純マネージャー

 セシールの顧客はまず,料金・るるるのサイトで無料の会員登録を行った上で,携帯電話に専用アプリをダウンロードする。次に携帯電話のバーコード・リーダーを起動し,請求書のバーコードを読み取る。会社コード,伝票番号などの情報を日本公共料金サービスのサーバーに送った後,支払い方法を選択し,決済するという仕組みだ。

 マーケティング本部DBマーケティング部DBプロモーショングループの谷脇正純マネージャーは,「便利な支払い手段を数多くそろえることが顧客に対する大きな意味でのサービス向上」と,料金・るるるの導入を決めた背景を説明する(写真1)。さらに,回収率の向上と回収コストの削減も狙いの一つだったという。

初期費用がかからない

 料金・るるるは,顧客がいつでも支払える利便性がメリット。「支払いを忘れがちな顧客でも思い立ったときに支払える」(谷脇マネージャー)。回収効率が向上すれば,催促にかかる回収コストも自然に下げられる。

 もう一つのメリットは初期投資,手数料を抑えられる点だ。導入にあたってのセシールの手間は,請求書に料金・るるるのサイトへ誘導するQRコードを追加するだけ。大規模なシステム変更が不要な上,必要な費用は利用者数などに応じて手数料を支払う完全従量課金のみ。初期費用はかからない。

 手数料も,顧客が支払い方法としてネット銀行を選択すれば下げられる。現在,セシールの顧客の55%がコンビニで,25%が郵便局で支払っているという。全体の8割を占めるコンビニ・郵便局には,手数料値上げの動きがあり,2006年4月に郵便局は1件当たりの手数料を30円近く引き上げた。現在の手数料はコンビニが約68円,郵便局が90円弱だという。料金・るるるの場合,顧客が支払い方法としてネット銀行を選ぶと1件当たり60円だ。

 ただしいくつか不満もある。まず,現時点ではNTTドコモのカメラ付き携帯電話機にしか対応していない点。携帯電話の機種によってはバーコード・リーダーの精度が劣ることも不満点に挙げる。現時点で対応するネット銀行がイーバンク銀行のみという点に関しても,日本公共料金サービスに改善を要望している。