日本コカ・コーラ(東京・渋谷区)が「CBL」(コンシューマー・ビバレッジ・ランドスケープ)と呼ぶ新しいマーケティングの考え方を導入し、戦略の大転換を図っている。

 通常、飲料市場をとらえる際には商品カテゴリーが重視される。同社製品には炭酸やコーヒー、お茶といったカテゴリーが存在する。もしくは消費者を区分することで市場を把握する方法もある。男性向け、10代向けというようにデモグラフィックス(人口統計学的)属性で分けるやり方だ。

 CBLでは、こうした商品カテゴリーやデモグラフィックス属性ではなく、市場を消費者が飲料を飲む際の動機や欲求といったサイコグラフィックス(心理学的)属性でとらえるものだ。日本コカ・コーラは今後、「気分一新」「食事との相性」といった19種類の「ニードステート」と呼ばれる動機の状態で市場を分割する。

 19の動機を調べるには、100の項目からなるアンケートをモニターに毎回答えてもらうことになる。同社では、この分析をするために新たにデータ・マイニング・システムを導入した。

 CBLは2004年に米コカ・コーラが開発。現在までに44カ国のグループ会社でCBLに基づいた開発やマーケティング戦略がとられている。19の動機は万国共通だ。英国では社内で競合すると見られた「ノンカロリー コカコーラ」と「コカコーラ ゼロ」が共存している。類似する商品イメージを持つ商品同士だが、消費者が飲む際の動機という観点で見ればまったく競合しないからだ。事前にCBLで調べてあった成果だ。

 同社がCBLに基づいたマーケティングに切り替えたのは昨年8月。9月から今年2月まで6カ月連続で前年実績を上回る売り上げを見せている。日本コカ・コーラの杉山繁和・経営情報部統括部長は「開発や営業はもちろん、各地のボトラーや社外の広告代理店などにも情報を提供し、意思の統一を図る。今後は具体的なマーチャンダイジングに落とし込んでいく」と手応えをつかんでいる。