トヨタ流の改善を進めるJAL。コンテナの下にあるのが「ドーリー」
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 日本航空(JAL)は、4月からトヨタ流改善手法に基づいた改善活動を全社に展開する。トヨタ流改革の視点で既存の業務を見直すことで、ムダな作業を見つけるなど既存の業務プロセスを見直す機会とすることが狙いだ。

 これは、2月に発表した2007年度からの3カ年の中期経営計画の柱ともなっている活動。既に、2004年から成田空港の貨物部門や羽田空港の地上業務などで取り組んでいる。

 昨年開港した神戸空港と北九州空港へ配備するドーリーと呼ばれるコンテナを積載する台車については、羽田の余剰分で対応することで、新規投資が必要なくなり、2億円以上の投資抑制効果があった。こうした成果が出ていることから客室や予約、営業など全社的な活動に拡大する。この活動は豊田自動織機から指導を受けている。

 羽田空港の地上業務では、2005年4月からJIT(ジャスト・イン・タイム)の概念を取り入れた。例えば、顧客から預かった荷物を航空機から降ろす業務では、従来、業務プロセスの中心を「航空機」に置いていた。到着する航空機に必要なドーリー(台車)とともに、積載を担当するチームが30分以上前から待機していた。だが天候などの影響で遅延はつきもので、定時に到着するとは限らない。待機中に、後の予定だった航空機が先に到着してしまい、台車に何も載せないまま空港内を移動しなければならないムダもあった。トヨタ流の視点でみれば「手待ちのムダ」だった。

 そこで、業務プロセスの中心を「貨物部門の詰め所」に変えた。航空機の前には数人の担当者だけを待機させ、システム上で詰め所に到着を知らせる合図が出た時点でドーリーとともに必要な人数で向かう。遅延により到着機の順番が変わっても、貨物部門の詰め所にいれば容易に対応できる。

 こうした取り組みにより、106台のドーリーと40台の運搬車が空き、106台のドーリーは神戸空港など2空港へ配備し直した。ほかにも成田や関西、韓国・仁川の各空港にある貨物部門でも改善活動に取り組んでいる。成田空港では空港会社から賃借している倉庫スペースを1割削減できた。

 こうした空港現場での成果が出たことから、予約や営業など事務職にも対象を広げる。現在7つのプロジェクトが進行中である。

 予約センターで取り組んでいるのが、業務の標準化だ。業務を、正味・付帯・ムダの3つに区分し、正味時間である顧客からの電話を受ける時間を増やす取り組みをしている。さらに、社内での書類や連絡方法などプロセスの標準化を進め、今秋までにほかの部門にも水平展開したい考えだ。

 営業部門でも旅行代理店へのパンフレットの配布方法を見直し、年間3000万円のコスト削減が見込めるまでになった。「トヨタ流という新しい視点でこれまでの業務を見直すきっかけにしたい」と経営企画室の荘司敏博マネジャーは意気込む。