外為どっとコムはF5ネットワークスのWAN高速化装置「WANJet」を導入し,東京に置くデータベースのバックアップ処理を高速化した(図1)。バックアップ先は沖縄のデータ・センター。同装置の導入によりバックアップ処理時間は約5分の1に短縮した。

図1●外為どっとコムはWAN高速化装置を導入しデータベースのバックアップ時間を短縮
図1●外為どっとコムはWAN高速化装置を導入しデータベースのバックアップ時間を短縮  導入前にテストしたところ,一定時間あたりの転送量が約5倍に増えたという。  [画像のクリックで拡大表示]

15分間隔で最大5ギガのデータを転送

 同社は2005年6月,災害時などの業務継続をにらんでディザスタ・リカバリ(DR)の導入を決定した。データベースのバックアップは,沖縄電力が出資するファーストライディングテクノロジーのデータ・センターに設置。地震が少ないことや,免震構造の建物などを評価したからである。

 東京と沖縄のデータ・センターは,沖縄県が提供する「沖縄県情報産業ハイウェイ」で結んだ。15分おきに東京のデータベースの変更履歴を記録したログを CIFS(common internet file system)を使って沖縄に送り,バックアップのデータベースに反映する。

 DRの構築段階で既に,バックアップに時間がかかることは分かっていた。バックアップ・データは100M~5Gバイトと膨大。一方,東京と沖縄を結ぶ回線は100Mビット/秒と高速でも,遅延の影響で実効速度は2M~3Mビット/秒(FTP利用時)にとどまると予想されたからだ。

 ただしビジネスの都合上,DRを開始した2006年3月から約1カ月間は,WAN高速化装置なしでDRを運用せざるを得なかった。だが15分のうちにログ・データを送り切れない事態がたびたび発生。さらに毎週末のメンテナンスに使うデータは20Gバイトもあったため,テープに記録して社員が沖縄に運ぶという運用を強いられた。

CIFSの高速化を評価し導入決定

 同社がWAN高速化装置の導入を検討し始めたのは2005年12月。2006年2月には,導入候補をWANJetを含む2製品に絞り込んだ。いずれもCIFSへの対応を得意とする製品だ。

 保守を担当するアルゴ21に検証してもらった結果,WAN高速化装置を使わない場合のデータ転送量は1秒当たり0.8Mバイト強。一方WANJetを使うと,同4Mバイトに向上したという。この数値は「対抗製品より少し優位だった」(システムグループの大嶋一彰・副部長)。これが決め手となり WANJetの導入を決定。インテグレーションは東京エレクトロンが担当した。

細切れデータの転送には効果出ず

 一方,効果があまりなかった用途もあった。同社は為替取引サービスで使うWebサーバーを東京のほか沖縄にも置き,沖縄のWebサーバーも東京のデータベースを参照することを計画した。具体的にはODBC(open database connectivity)を使ってデータベースを参照する際に送られるデータが高速化するかどうかを検証したのだ。

 だが「Webサーバーが参照するのは,米ドルの金額など主に細切れのデータ。速くなるどころかオーバーヘッドが発生して遅くなることすらあった」(大嶋副部長)。このため沖縄に設置したWebサーバーはバックアップ専用とし,沖縄のデータベースを参照するよう計画を変更。WANJetはDRのデータベース・バックアップを主目的に利用することにした。