オフィス用品の通信販売でスタートしたアスクルが、次のステージに移ろうとしている。同社が目指す次世代の姿「アスクル2.0」のロードマップが少しずつ見えてきた。

 1997年に中小事業所向けのオフィス用品通販事業からスタートしたアスクルは、2001年から「顧客企業の対象範囲」を中堅・大企業にまで広げた。12月14日に発表された2007年5月期中間期決算では、売り上げ構成比の12%を中堅・大企業との法人契約によるオフィス用品の一括購買が占めるまでになった。アスクルはこの5年で客先を大企業まで広げることに成功した。

 客先を広げたアスクルが次に目指すのは「商材」の広がりだ。引き続きオフィス用品を商材の中核に据えながらも、あらゆる間接材へと取り扱い商材を広げ、オフィス用品を含む「間接材すべて」の企業一括購買を促していく。

 2007年8月には、アスクル2.0の鍵を握る戦略システム「間接材一括購買システム」を稼働させる計画だ。300人規模の社員数であるアスクルは、この1年間だけで社員数を一気に約80人も増やし、間接材一括購買システムの開発や物流の整備、これらの新しいインフラを使った新サービスの開発に集中投入している。

 間接材一括購買は当面、ニーズが一番強い大企業を対象にサービスを提供する予定だが、2010年ごろまでには、アスクルが創業以来最も得意とする中小事業所にまでサービスの利用範囲を広げていく。将来的には個人のシステム利用まで視野に入れている。

 つまり、この段階で、顧客企業と商材の「両面」において、市場の「裾野」全体をすべてカバーできるようになる。

 この時にはもはや、ページ数に限りがある紙のカタログに商品を掲載するだけでは対応できない。そこでアスクル2.0のプラットフォームは、掲載量に限りがないインターネットに本格的に移って行くことになる。岩田彰一郎社長兼CEO(最高経営責任者)は「アスクル2.0の発想のきっかけは、カタログの限界から来ている」と明かす。

 昨今は、商材の裾野を意味する「ロングテール」商品への関心が高まっているが、アスクルはここに、自社のもともとの強みである「顧客企業規模」の裾野の広さを掛け合わせる。それにより、広範囲での間接材メーカーと顧客企業のマッチングビジネスを展開しようとしている。

 岩田社長は「大小様々なすべての事業所に向けて、あらゆる間接材を提供するワンストップサービスの利便性が結果的に、(アスクルの利益の源泉であるオフィス用品の)定番商品に顧客を引き寄せる吸引力になる」とも考えている。

 当然、商材が多岐に渡ってくれば、回転頻度や取り扱い数量が小さいものについては、アスクルが自社の物流センターに在庫を持たない「非在庫型」のビジネスモデルも必要になってくる(関連記事を参照)。

 アスクル2.0はまさしく、従来の在庫保有型のアスクルから、非在庫モデルとの複合的な組み合わせによる新しいアスクルへの転換を意味しているともいえるだろう。