沖電気工業の半導体製造拠点である宮城沖電気は2006年8月,地震を検知して製造ラインを緊急停止できるようにする「リアルタイム地震防災システム」を機能強化した。機能強化のポイントは,気象庁が提供する「緊急地震速報」の情報を検証・補正して精度を向上し,直下型地震にも対応できるようにしたことだ。システムは,リアルタイム地震情報利用協議会と共同で開発した。すでに試験運用を開始しており,2006年11月に本格運用を開始する。

 リアルタイム地震防災システムは,緊急地震速報をトリガーに,必要に応じて製造ラインを安全に停止させ,従業員を安全な場所に待避させる目的で,2005年9月末に導入した。緊急地震速報は,地震発生時の初期微動(P波)を震源近くの観測点で計測し,そのデータを基にして震源や地震規模などを推測。地震の主要動(S波)の到達前に,その情報を地上回線(インターネット)と衛星回線を介して人やシステムに通達する仕組みである。しかしこの仕組みだけでは,観測点付近での落雷やノイズで誤報が生じる可能性があること,直下型地震のように震源地が近い場合には緊急地震速報の通達が間に合わないことが課題となっていた。

 そこで今回,これらの弱点をカバーする機能強化を図った。まず,気象庁の観測点とは別に,宮城沖電気が独自に3台のP波地震計を現地に設置。緊急地震速報を受信して解析した地震危険度と,現地のP波地震計の計測結果を突き合わせ,地震発生の真偽を検証したり,地震危険度を補正したりする。また,緊急地震速報よりも現地のP波地震計の計測結果が先に到達した場合は,直下型地震の可能性が高いため,現地のP波地震計の測定結果を基に地震危険度を判定し,危険度に応じて,社内への緊急放送,ガス薬品の遮断,設備の緊急停止のための制御用信号を発信する。