ビッグデータを高速処理する技術として注目が集まっている複合イベント処理(CEP)。実は通信事業者の課金システムで採用が進んでいる。どのように活用されているのか。20年以上にわたって通信事業者向け課金システムの開発を手がけ、海外通信事業者の動向にも詳しいシステムインテグレーター、アイエムの菊池廉也代表取締役社長に聞いた。

(聞き手は西村 崇=日経情報ストラテジー


CEP(複合イベント処理)はどのような通信事業者の課金システムで採用されているのですか。

写真1●アイエムの菊池廉也代表取締役社長
写真1●アイエムの菊池廉也代表取締役社長
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 ドイツのT-Mobile、ノルウェーのネットワーク・ノルウェーなど、大手通信事業者が自社の課金システムで採用しています。国内でもソフトバンクモバイルが取り入れています。いずれも当社が国内で展開している、データの収集・加工・連携を行う独エンタレストの基盤ソフト「EDR Workbench」を採用しています。

 各社では、利用者がどのような通信サービスをどれだけ使っているのかを、通信網からデータを収集して課金処理を行うのに、CEPを利用しています。

 課金処理の対象になるコール数は膨大です。ある携帯電話サービスを手掛ける通信事業者では、1日10億コール以上になります。大量データの中からコールごとに、開始時間と終了時間を探し出して処理していかなければならない。そのためCEPが必要なのです。

 これだけのビッグデータを用いて課金処理をしなければならないこともあって、通信事業者の間では、コールや顧客ごとに料金を課すという意味の「ビリング(課金)」という言葉を使わなくなってきました。代わりに2012年ごろから「レベニューマネジメント(収益管理)」という言葉が広まっています。

言葉の変化で変わってきていることはありますか。

 CEPを採用した課金システムの活用方法もレベニューマネジメントにシフトしてきています。海外の通信事業者は、単に料金を精算するだけでなく、レベニューアシュアランス(収益保証)や、事業としての成果チェックに活用するようになっているのです。

 レベニューアシュアランスとは、本番システムで行う課金処理が正しく行われているのかを、別系統のシステムでも処理させてチェックすることを指します。監査に近い取り組みです。