インフラは世界最高水準だが利活用が進んでいない─こう言われ続けてきた日本のICTインフラを活性化させる国主導の取り組みが「世界最先端IT国家創造宣言」だ。それを踏まえた「ICT成長戦略」を打ち出した総務省はどのようなプランを描いているのか。渡辺審議官に聞いた。
国が主導するICT戦略は2001年のe-Japan戦略に端を発する。それから2度の政権交代を経て、総務省は2013年7月に「ICT成長戦略」を打ち出した。どこが変わったのか。
色彩が全く変わってきている。政府のIT総合戦略本部が2013年6月に打ち出した「世界最先端IT国家創造宣言」は視点が国民ベース。どういう社会を作っていくかに主眼が置かれている。それはまさしくICTがなくてはできないシナリオになっている。
その観点から総務省は、ICTインフラをどう整備していくかということに加えて、ICTをどう使っていくかという方針を明確にした。それが今回のICT成長戦略だ。目指すは「世界で最もアクティブな国になる」こと。そのためにICTで付加価値産業を創っていく。これがビジョンの一つ。加えて、今の日本が抱える社会的課題を解決するためにICTを使っていこうというのがもう一つのビジョンだ。
これまでのICTの利活用促進は掛け声どまりの印象がある。今回、鍵になるポイントは。
ビッグデータ、オープンデータ、パーソナルデータの3つのデータだ。私はこれをまとめて「スリーDプロジェクト」と呼んでいる。
このうちビッグデータに関しては、すさまじいまでの技術進化が後押しする。この10年で、CPUやメモリーの性能は100倍になり、モバイルのスピードも100倍になった。例えて言えば、昔なら会社のコンピュータで100日かかったものが、今や個人のスマホで1日でできる。かつては高嶺の花だったリッチなICTリソースがコンシューマーベースで使えるようになった。だからこそ、医療や農業でのICT利活用を堂々と前面に押し出せる。これが従来と大きく変わったところだ。