インフラは世界最高水準だが利活用が進んでいない─こう言われ続けてきた日本のICTインフラを活性化させる国主導の取り組みが「世界最先端IT国家創造宣言」だ。それを踏まえた「ICT成長戦略」を打ち出した総務省はどのようなプランを描いているのか。渡辺審議官に聞いた。

(聞き手は加藤 雅浩=日経コミュニケーション編集長)

渡辺 克也氏(Katsuya Watanabe) 1961年生まれ。1984年、慶應義塾大学工学部電気工学科を卒業後、郵政省(現・総務省)入省。東海電気通信監理局放送部長、電気通信局電波部マルチメディア移動通信推進室長、情報通信政策局研究推進室長、通信総合研究所主管、情報通信研究機構統括、総合通信基盤局電気通信事業部電気通信技術システム課長、電波部移動通信策課長、電波部電波政策課長、情報通信国際戦略局情報通信政策課長などを歴任。2013年6月から大臣官房審議官(情報流通行政局担当)。現在に至る。趣味はサイクリング。
(写真:新関 雅士)

国が主導するICT戦略は2001年のe-Japan戦略に端を発する。それから2度の政権交代を経て、総務省は2013年7月に「ICT成長戦略」を打ち出した。どこが変わったのか。

 色彩が全く変わってきている。政府のIT総合戦略本部が2013年6月に打ち出した「世界最先端IT国家創造宣言」は視点が国民ベース。どういう社会を作っていくかに主眼が置かれている。それはまさしくICTがなくてはできないシナリオになっている。

 その観点から総務省は、ICTインフラをどう整備していくかということに加えて、ICTをどう使っていくかという方針を明確にした。それが今回のICT成長戦略だ。目指すは「世界で最もアクティブな国になる」こと。そのためにICTで付加価値産業を創っていく。これがビジョンの一つ。加えて、今の日本が抱える社会的課題を解決するためにICTを使っていこうというのがもう一つのビジョンだ。

これまでのICTの利活用促進は掛け声どまりの印象がある。今回、鍵になるポイントは。

 ビッグデータ、オープンデータ、パーソナルデータの3つのデータだ。私はこれをまとめて「スリーDプロジェクト」と呼んでいる。

 このうちビッグデータに関しては、すさまじいまでの技術進化が後押しする。この10年で、CPUやメモリーの性能は100倍になり、モバイルのスピードも100倍になった。例えて言えば、昔なら会社のコンピュータで100日かかったものが、今や個人のスマホで1日でできる。かつては高嶺の花だったリッチなICTリソースがコンシューマーベースで使えるようになった。だからこそ、医療や農業でのICT利活用を堂々と前面に押し出せる。これが従来と大きく変わったところだ。